【論 文】
マルコフ連鎖モデルを適用した木材パルプの平均使用回数解析
山 田 宏 之*・松 野 泰 也*・醍 醐 市 朗*・足 立 芳 寛*
【要 旨】 日本における木材パルプのマテリアルフローにマルコフ連鎖モデルを適用し,木材パルプの平均使用回数の解析を行った。2003年の日本における木材パルプの平均使用回数は2.16回であった。輸出先での使用状況も国内同様と仮定し,輸出先の使用も含めて計算すると,3.01回となる。この輸出先の使用も含めた平均使用回数は,88年と比べ,0.93回増えていた。
各製品の使用しているパルプの使用回数別構成比率を解析したところ,新聞用紙の古紙の使用は近年大きく向上しており,2003年では,使用3回目以上のパルプの割合が50%近い割合となった。また,段ボール原紙においては,使用5回目以上のパルプが原料の60%以上を占めることがわかった。
感度分析を行った結果,2003年のマテリアルフローを基準として,印刷・情報用紙の古紙消費率を40.0%まで向上させると,平均使用回数は3.61回まで向上することがわかった。
キーワード:パルプ,使用回数,マルコフ連鎖モデル,紙,リサイクル
廃棄物学会論文誌,Vol.17, No.5, pp.313-321, 2006
原稿受付 2005.10.4 原稿受理 2006.6.26
* 東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻
連絡先:〒113-8656 文京区本郷7-3-1
東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻
山田 宏之