【展望論文】

無機化合物の臭素化反応に関する熱力学的検討
――臭素系難燃プラスチックの難燃機構ならびに熱分解リサイクルに関する一考察――
柴 田 悦 郎*・Mariusz Grabda*・中 村   崇*

【要 旨】 臭素系難燃プラスチックの燃焼時における,有機臭素系難燃剤と難燃助剤の相乗効果の解明ならびに三酸化アンチモンに替わる高機能の難燃助剤を探す上で,無機化合物の臭素化反応と生成した臭化物に関する熱力学的な性質を明らかにする必要がある。また,難燃プラスチックの熱分解油化リサイクルにおける脱臭素剤を探査する上でも,無機化合物の臭素化反応に関する熱力学的な検討が重要である。そこで,本論文では,まず,臭素化反応の生成物である臭化物の揮発性に関して,アンチモンをはじめとする様々な無機臭化物の蒸気圧を温度に対して整理して議論した。さらに,各酸化物,水酸化物ならびに炭酸塩の臭素化反応の標準ギブズエネルギー変化を整理し,難燃助剤ならびに熱分解リサイクルの脱臭素剤の探査に向けた基礎的知見として熱力学的な考察を行った。

キーワード:臭素系難燃剤,難燃助剤,脱臭素剤,熱分解油化リサイクル,熱力学
廃棄物学会論文誌,Vol. 17, No.6, pp.361-371, 2006
原稿受付 2006.6.14  原稿受理 2006.9.15
* 東北大学 多元物質科学研究所
連絡先:〒980-8577 仙台市青葉区片平二丁目1-1
東北大学 多元物質科学研究所  柴田 悦郎