【論 文】
超臨界水酸化による有機塩素化合物の分解・無害化
岡 島 いづみ*・野 口 博 徳*・佐 古 猛**
【要 旨】 超臨界水酸化による有機塩素系農薬とダイオキシン類の分解・無害化を検討した。有機塩素系農薬の2,4,5-Tと2,4-Dは600℃,25MPa, 30分,過剰過酸化水素比1.4(2,4,5-T)および1.1(2,4-D)の条件で分解率99.99%以上とほぼ完全に分解した。また600℃,30分の条件で2,4-Dの超臨界水酸化,超臨界水加水分解および熱分解の分解生成物を比較したところ,超臨界水酸化では中間生成物は検出されなかったが,超臨界水加水分解ではフェノール等が生成し,熱分解ではさらに多環芳香族化合物も生成した。ダイオキシン類の超臨界水酸化について,各同族体の分解率は温度および圧力の増加とともに上昇した。一方,毒性が強い四塩素化物や五塩素化物は化学的に安定なので,中間生成物として残存する傾向があることが明らかになった。すべてのダイオキシン類同族体は600℃,25MPa, 30分,過剰過酸化水素比10,000の反応条件で99.999%以上分解した。
キーワード:超臨界水酸化,分解,2,4,5-T, 2,4-D, ダイオキシン類
廃棄物学会論文誌,Vol.17, No.6, pp.387-395, 2006
原稿受付 2005.8.26 原稿受理 2006.9.1
* 長崎菱電テクニカ(株) 技術部制御・環境システム課
** 静岡大学工学部物質工学科
連絡先:〒432-8561 静岡県浜松市城北3-5-1
静岡大学工学部 物質工学科 佐古研究室 岡島 いづみ