【論 文】
溶融飛灰中重金属の塩化揮発に及ぼす未燃炭素の影響
中 山 勝 也*・酒 井 啓 介**・河 地 貴 浩**・田 島 善 直**・水 野 賀 夫**・渡 辺 藤 雄**・松 田 仁 樹**・高 田 満*
【要 旨】 溶融飛灰中の重金属の塩化揮発に及ぼす未燃炭素の影響を調べるために,溶融飛灰および炭素分を含まない模擬飛灰を用いて温度873-1,173K,
窒素流通下で加熱実験を行った。
その結果,溶融飛灰中の鉛,亜鉛の揮発率は温度の上昇とともに増加し,1,173Kでいずれもほぼ100%となったのに対して,模擬飛灰のそれは85%,25%に留まった。溶融飛灰中のこれら金属酸化物はCaCl2との塩素化反応と未燃炭素による還元反応が併発的に起こり,塩化物(PbCl2, Pb2OCl2, ZnCl2)および単体金属(Pb, Zn, Cu)になることを認めた。
溶融飛灰中の重金属酸化物の還元は,炭素当量比RCに影響され,1,173K, RC=1.25-13.63では鉛揮発率はほぼ100%,亜鉛についてもRC=13.63でほぼ100%の揮発率となった。一方,銅はRCの増加とともに揮発率は減少し,RC=4以上で約5%以下となった。
キーワード:未燃炭素,還元,重金属,揮発,溶融飛灰
廃棄物学会論文誌,Vol.17, No.6, pp.428-436, 2006
原稿受付 2006.3.20 原稿受理 2006.9.19
* 新東工業(株) 開発部
** 名古屋大学大学院 エネルギー理工学専攻
連絡先:〒464-8603 名古屋市千種区不老町
名古屋大学大学院 エネルギー理工学専攻 松田 仁樹