【論  文】

Ca, Si含有量に基づく溶融飛灰からのPb, Zn回収方法選択に関する研究
岡 田 敬 志*・松 藤 敏 彦*・東 條 安 匡*

【要 旨】 溶融飛灰(以下「飛灰」という)はPb, Zn濃度が高いため,山元還元による資源としての価値が高い。有用資源の濃縮,精錬阻害物質除去の前処理が必要であるが,炉形式,被溶融物の種類,消石灰吹き込みの有無などによって溶融飛灰の性状は異なる。そこで本研究では灰溶融19施設,ガス化溶融4施設より溶融飛灰を採取し,水洗処理,化学抽出法を行い,飛灰性状ごとに適用すべき前処理法を検討した。
 難水溶性物質の主成分はCaとSiであり,Si含有量の高い(おおよそ5%以上)溶融飛灰はCa濃度によらずPb, Znの抽出が困難であった。Ca含有量の高い(おおよそ10%以上)溶融飛灰は化学抽出が必要である。CaおよびSi含有量の低い(おおよそ2%以下)溶融飛灰は水洗処理によってPb, Znを濃縮でき,Pb, Znの含有量が数%と低い場合には低濃度のアルカリあるいは酸による簡易的な化学抽出が適用できる。いずれも,精錬原料として十分な品位が得られた。Caは消石灰吹き込み,Siはバグフィルタろ布のコーティング剤,焼却飛灰の混合が,高含有量の要因である。また,ガス化溶融施設,コークスベッド式灰溶融施設の溶融飛灰はSi含有量が高い。

キーワード:溶融飛灰,飛灰性状,前処理方法,Pb・Zn回収
廃棄物学会論文誌,Vol. 18, No.1, pp.8-19, 2007
原稿受付 2006.6.15  原稿受理 2006.10.10
* 北海道大学大学院工学研究科 環境循環システム専攻 廃棄物処分工学研究室
連絡先:〒060-8628 札幌市北区北13条西8丁目
北海道大学大学院工学研究科 環境循環システム専攻
廃棄物処分工学研究室  松藤 敏彦