【論 文】
酵素−微生物処理によるホタテガイ廃棄組織からのカドミウム分離
小 原 寿 幸*・梅 原 泰 男**・穂 苅 勝 利**
【要 旨】 ホタテガイ加工工場から排出される中腸腺(ウロ)は大量のカドミウムを含んでいるため廃棄物として扱われており,その有効利用は北海道の水産業界において重要な問題である。ホタテガイ中腸腺を酵素で可溶化し,カドミウム蓄積細菌(Xanthomonas sp. UR No.2)によって,可溶化液からカドミウムを分離する手法を開発した。市販の20種のプロテアーゼを用いて中腸腺の可溶化を検討した結果,酵素の種類によって中腸腺の可溶化率と可溶化液のカドミウム濃度が変化した。坂口フラスコを用いた中腸腺可溶化液中の培養試験では,カドミウム蓄積細菌は良好な増殖を示し,可溶化液中のカドミウムは顕著に減少した。ジャーファーメンターを用いたカドミウム分離試験も良好な結果を示した。本菌によるカドミウム分離は,前段のホタテガイ中腸腺の可溶化処理(酵素の種類,酵素の組み合わせなど)によって大きく左右されることがわかった。
キーワード:ホタテガイ中腸腺,微生物,カドミウム分離,プロテアーゼ,可溶化
廃棄物学会論文誌,Vol.18, No.1, pp.58-66, 2007
原稿受付 2006.3.31 原稿受理 2006.11.7
* 函館工業高等専門学校 物質工学科
** 日本化学飼料(株)
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函館工業高等専門学校 物質工学科 小原 寿幸