【特 集:バイオマスとエネルギー】

「バイオマス・ニッポン総合戦略」とバイオマス利活用の推進
――国産バイオ燃料の大幅生産拡大に向けた取り組みとバイオマス利活用のさらなる加速化――
末 松 広 行*

【要 旨】 バイオマスの利活用は,温室効果ガスの排出抑制による地球温暖化防止や,資源の有効利用による循環型社会の形成に資するほか,地域の活性化や雇用につながるものである。また,従来の食料等の生産の枠を超えて,耕作放棄地の活用を通じて食料安全保障にも資する等,農林水産業の新たな領域を開拓するものである。
 わが国のバイオ燃料の取り組みの現状は,バイオエタノールについては,全国6ヶ所での小規模な実証試験が行われているに過ぎない。しかしながら,2006年3月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」では,バイオマスの輸送用燃料としての利用に関する戦略が明記される等,わが国においても,バイオ燃料の利用促進に向けた施策が急速に進展している。
 2007年2月には,農林水産省は「国産バイオ燃料の大幅な生産拡大」について報告した。稲わら等の収集・運搬,エタノールを大量に生産できる作物の開発,稲わらや木材等からエタノールを大量に生産する技術の開発等がなされれば,2030年頃には600万kL(原油換算360万kL)の国産バイオ燃料の生産が可能となる。

キーワード:バイオマス,バイオ燃料,バイオエタノール,バイオディーゼル(BDF),地球温暖化
廃棄物学会誌,Vol.18, No.3, pp.138-147, 2007
原稿受付 2007.4.16
* 農林水産省大臣官房環境政策課長
連絡先:〒100-8950 東京都千代田区霞ヶ関1-2-1