【論  文】

有機酸を用いた都市ごみガス化溶融飛灰からの重金属浸出
齋 藤 千 愛*・岡 田 治 樹**・Monica Joy Titus***・吉 岡 敏 明****・溝 口 忠 昭*****

【要 旨】 都市ごみガス化溶融飛灰(「飛灰」という)からの亜鉛,鉛,銅の浸出特性をpHスタット法によって検討した。飛灰の水浸出残渣を対象に,塩酸単独溶液を用いて浸出を行った場合,pH2における浸出率は,いずれの金属に対しても10%程度に過ぎなかった。有機酸の添加効果が顕著であり,クエン酸の場合,濃度0.001M,pH4の条件における亜鉛,鉛および銅の浸出率は,それぞれ64, 64および91%であった。クエン酸が浸出剤として有効である理由は,錯体を形成して重金属を溶液中に安定化するのではなく,触媒的に重金属の溶出を促進するためであると考えられる。反応温度を25℃から50℃に上げると亜鉛,鉛,銅およびケイ素の浸出率はいずれも低下した。pHスタット法を用い,クエン酸存在下で浸出する方法には,低有機酸濃度で高い重金属浸出率が得られるだけでなく,難ろ過性のゲル状ケイ酸が生成しないという特徴もある。

キーワード:都市ごみガス化溶融炉,飛灰,クエン酸,重金属,浸出
廃棄物学会論文誌,Vol.18, No.3, pp.157-166, 2007
原稿受付 2006.6.14  原稿受理 2007.2.15
* 東北大学大学院工学研究科 応用化学専攻
** 東北大学工学部分子化学工学科
*** 東北大学環境保全センター
(現在,米国California大学Berkeley校)
**** 東北大学大学院環境科学研究科
***** 東北大学環境保全センター
連絡先:〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-07
東北大学大学院環境科学研究科  吉岡 敏明