【特 集:廃棄物・環境と会計】

廃棄物会計といわゆる環境会計の統合に向けて
橋 本 征 二*

【要 旨】 廃棄物会計といわゆる環境会計。この二つの取り組みは,ともに環境会計という枠組みの中に位置づけられながら,少し違った方向に発展してきたと思われる。廃棄物処理事業を対象とした環境会計を考えたとき,両者の手法は補完的な関係にあるのではないか。本稿では,このような視点をもとに,いわゆる環境会計の枠組みや,その公共部門への適用にあたっての論点をレビューし,廃棄物会計といわゆる環境会計の統合に向けた課題を以下のように整理した。(1)地方自治体の廃棄物処理事業は,それ自身が環境保全のための活動であり,すべてのコストを環境保全コストとして把握するのが妥当である。その上で,廃棄物処理事業を個別の要素に分解し,どのような活動にどれだけのコストが掛けられ,それによってどのような環境保全効果や経済効果が得られているかを明確にすることが重要である。(2)フロー情報のみに基づく環境会計では,環境対策資産や環境負荷の蓄積が評価されず,誤った解釈や意思決定を導きかねない。したがって,ストックに関する情報も枠組みに含めるべきである。

キーワード:廃棄物会計,環境会計,公共部門,フロー情報,ストック情報
廃棄物学会誌,Vol.18, No.4, pp.222-230, 2007
原稿受付 2007.6.17
* (独)国立環境研究所 主任研究員
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