【論  文】

溶媒洗浄による溶融飛灰中塩素の除去特性に関する研究
岡 田 敬 志*・松 藤 敏 彦*・東 條 安 匡*

【要 旨】 溶融処理によって発生する溶融飛灰はZn, Pbを高濃度に含むことから資源として価値がある。本研究は,精錬施設において規制が厳しいClに注目し,溶媒で洗浄除去する方法について検討を行った。用いた洗浄溶媒は,蒸留水,Na2CO3溶液,Na2SO4溶液,蒸留水にCO2を通気したものの4種類であり,最適の濃度,ガス流量,回数,温度,時間を決定したのち,23種類の溶融飛灰を各洗浄溶媒で洗浄し,それぞれの洗浄残渣中のCl量を比較した。
 Na2CO3溶液はフリーデル氏塩,Zn, PbのCl化合物を溶解することができるため,最もCl除去に効果的であった。Na2CO3洗浄により残留する難溶解性Clは,溶融飛灰中のSi量との相関が見られた。Na2CO3洗浄後の残渣はCl含有量がISP精錬の基準値0.2%を満足し,Znの品位も40%以上とISP精錬あるいは亜鉛精錬の要求品位を満たしていた。さらにNa2CO3溶液は繰り返し利用することが可能であり,薬剤コストを低減できる。

キーワード:溶融飛灰,Cl除去,溶媒洗浄,残渣中Cl含有量
廃棄物学会論文誌,Vol.18, No.6, pp.357-366, 2007
原稿受付 2006.11.1  原稿受理 2007.7.20
* 北海道大学大学院工学研究科 環境循環システム専攻 廃棄物処分工学研究室
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北海道大学大学院工学研究科 環境循環システム専攻 廃棄物処分工学研究室  岡田 敬志