【解  説】

日本における産業廃棄物の処分を巡る諸問題
――現場で何が起きている――
小 野 雄 策*・遠 藤 和 人**・山 田 正 人**

【要 旨】 大規模不法投棄問題が大都市から離れた地域で多発しており,これらの事案のうち産廃特措法の補助を受けた9ヶ所の事例について解析した。その結果,似非リサイクルによるもの,自社保管容量を異常に超えるものなど,大規模不法投棄につながる要因を明らかにし,国および地方における不法投棄の対応策を整理するとともに,その修復処理費用についても詳述した。これらの不法投棄事案は地方だけでなく,大都市周辺でも数百ヶ所に及ぶ小規模な「廃棄物の山」が築かれ,その対応に追われており,廃棄物の山は埼玉県だけでも産廃特措法で処理されている投棄量の20%以上に達し,その修復に追われている事実を明らかにした。さらに,これら不法投棄事案の一つである脱税目的の硫酸ピッチ事件を整理し,埼玉県における現場修復方法を示した。
 不法投棄の現状修復を行政が代執行する場合には,環境基本法で定められている「生活環境保全上の支障あるいはそのおそれ」の定義が重要なため,廃棄物の不法投棄を中心にその支障項目の洗い出しをおこなった。

キーワード:産業廃棄物,不法投棄,廃棄物の山,硫酸ピッチ,生活環境保全上の支障
廃棄物学会誌,Vol.18, No.6, pp.370-381, 2007
原稿受付 2007.10.12
* 埼玉県環境科学国際センター
** (独)国立環境研究所
連絡先:〒347-0115 埼玉県騎西町上種足914
埼玉県環境科学国際センター 廃棄物管理担当  小野 雄策