【論  文】

バイオディーゼル製造設備から排出されるグリセリン廃液のメタン発酵への適用の研究
中 村 一 夫*・来 住 宜 剛**・池 上   詢***

【要 旨】 廃食用油からバイオディーゼル燃料を製造する際に,触媒のカリウムを多く含むグリセリンやメタノールの混合廃液が発生する。この廃液は,現在廃棄物として処理されているが,グリセリンやメタノールのような分解性の有機物の有効利用の観点からメタン発酵での再資源化の可能性について実験を実施した。
 実験の結果,グリセリン混合廃液は,廃液中に含まれるカリウムによる発酵阻害もなく,良好にメタン発酵することが確認された。その際のCODCr分解率は80%以上であった。また,グリセリン廃液におけるガス発生率は分解CODCr1gあたり0.51NL-dryであり,理論上のガス発生率とほぼ一致する結果を得た。一方,メタン発酵を問題なく進めるためには,窒素やリンのような栄養塩や固形物を適切な濃度に保つ必要があるが,グリセリン廃液は固形分を含まないうえに窒素やリンの含有量が少ない。この対策としては,生ごみとの投入が効果的であった。

キーワード:廃食用油,メタン発酵,グリセリン,バイオディーゼル,バイオガス
廃棄物学会論文誌,Vol.19, No.1, pp.9-16, 2008
原稿受付 2005.11.15  原稿受理 2007.9.13
* 京都市環境局 適正処理施設部施設整備課
** 日立造船(株) 技術研究所
*** 福井工業大学機械工学科
連絡先:〒604-8101 京都市中京区柳馬場御池下ル柳八幡町65
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京都市環境局 適正処理施設部施設整備課  中村 一夫