【特 集:廃棄物処理施設の長期包括運転管理】

長期責任委託の効用と実務における検討の視点
副 島 功 寛*

【要 旨】 廃棄物処理事業には多様なリスクが内在し,リスクへの対応次第で公共団体の将来負担は大きく変化する。長期責任委託は,この公共事業に内在する事業リスクを顕在化させ,公共団体の将来負担を抑制する有効な手段である。
 長期責任委託の検討では,民間との意見交換等を通じて「VFMの源泉」を見極め,「VFMを求める事業範囲」と「民間の事業リスクを低減する事業範囲」を切り分けるとともに,「長期責任委託導入によるVFM」と「競争環境確保によるVFM」を峻別することが望ましい。
 公共団体の事情により導入が困難な場合でも,千葉市や柏市のように柔軟な事業スキームを開発することで当該団体に適した長期責任委託が導入可能である。
 ただし,長期責任委託の導入成果を公共部門全体に波及させるには,民間事業者を育成するという大局観が必要である。そして民間をモニタリングするだけでなく,運営を支援する視点をもち,事業の安全性を確保すべきである。

キーワード:長期責任委託,事業リスク,事業スキーム,将来負担,VFM
廃棄物学会誌,Vol.19, No.2, pp.96-101, 2008
原稿受付 2008.2.1
* (株)日本総合研究所 創発戦略センター
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