【研究ノート】
リサイクルしやすいクルマの開発は進んでいるのだろうか?
――自動車の「リサイクル設計」に関する一考察――
外 川 健 一*・木 村 眞 実**
【要 旨】 本稿では,自動車リサイクル法による新しいシステムが,リサイクルしやすい車の開発を促すということが,理論的にいえるのか否かという問題意識の下,「ASR料金」と「リサイクル設計」との関係を調査し,メーカーのいう「リサイクル設計」とは具体的に何を意味し,その取り組みが「ASR料金」の低減につながりうるのかという考察を行った。
結論は,現段階においてメーカー等によるリサイクルしやすい車の開発が単純にASR料金の低下につながるとは考えられない。その主な理由として,新しいシステムでは「自動車メーカーは静脈部門を中途半端にしか制御できない」こともあり,リサイクル設計のなかでも特に「リユース設計」が,解体の現場で必ずしも反映されないことが考えられる。なお,「リサイクル設計」を実際のリサイクルの現場で活かすためには「リサイクル市場の確保・創造」という要素が重要であることを強調した。
キーワード:使用済自動車,リサイクル,リサイクル設計,ASR,自動車リサイクル法
廃棄物学会論文誌,Vol.19, No.2, pp.155-159, 2008
原稿受付 2007.11.30 原稿受理 2007.12.20
* 熊本大学法学部
** 九州大学大学院経済学府
連絡先:〒860-8555 熊本市黒髪2-40-1
熊本大学法学部 外川 健一