【論文】

最終処分場内部保有水質制御のための浸透性反応層(HPRB)技術の開発
小 野 雄 策*・川 嵜 幹 生*・渡 辺 洋 一*・山 田 正 人**・遠 藤 和 人**・小 野 芳 朗***

【要 旨】 著者らは,最終処分場の中間・底部覆土に水平の浸透性反応層(Horizontal Permeable Reactive Barrier: HPRB)を設置するために,HPRB資材として火山灰土壌(関東ローム層土壌)に鉄粉(産業廃棄物)と熔融スラグを混合したものを開発してきた。本研究では,実規模の大型ライシメーター(直径5m×深さ7m)を用いて,このHPRBの浸出水中の化学物質に対する捕捉浄化効果について検討した。実験は,HPRBを設置した実験区2基と,熔融スラグ(Slag)を設置した実験区2基を設け,埋立廃棄物として,焼却灰と破砕ごみを等量混合した無機性廃棄物を充填した2基と,この廃棄物にコンポストを5%添加した廃棄物を充填した2基を設置した。以上4基について,2因子(中間・底部覆土と廃棄物),2水準(廃棄物の2種と覆土材の2種)の22型実験計画法に基づき,埋立初期の約1年間についてpH等,有機汚濁成分,イオン類,VFAs,重金属類(非金属類含む),有機化学物質(フェノール類,PAHs,クロロベンゼン類)など125項目の化学物質の浸出水濃度をモニタリングした。その結果,125項目のうち検出された項目は60項目で,Ca2+, Mg2+, NO3-, Zn, 1,4-Dichlorobenzneの5項目を除くすべての項目でHPRBの主効果が認められ,相当量の化学物質がHPRBにより捕捉・浄化できることが判明した。

キーワード:浸透性反応壁,覆土層,浸出水,重金属類,有機化学物質
廃棄物学会論文誌,Vol.19, No.3, pp.197-211, 2008
原稿受付 2007.5.15
原稿受理 2008.1.15
*埼玉県環境科学国際センター
**(独)国立環境研究所
***岡山大学大学院
連絡先:〒347-0115 埼玉県北埼玉郡騎西町上種足914
埼玉県環境科学国際センター 廃棄物管理担当  小野 雄策