【総  説】

廃棄物処理におけるアスベストの分析
山 本 貴 士*・貴 田 晶 子*

【要 旨】 アスベストに対する規制が段階的に進展して製造や使用の原則禁止がなされたことから,今後は約4,000万tonが残存しているとされるアスベスト含有建材の解体やアスベスト廃棄物の処理過程における曝露や環境移行への対策が重要となる。アスベストの規制に伴って国内外でアスベストの分析法が整備されてきたが,アスベストの毒性発現の特異性からその分析法は通常の有害物質の分析法とは異なっており,様々な問題点が指摘されている。本稿では,特に廃棄物処理に関連したアスベストの分析法について,空気や固体試料など媒体別の公定分析法を紹介し,また位相差顕微鏡や偏光顕微鏡,電子顕微鏡やX線回折法などの測定法について,それぞれの特長や問題点について概観した。また,廃棄物処理に関連したアスベストの分析事例について整理した。さらに,廃棄物処理に関してアスベストの分析法が求められている方向性について簡潔に記した。

キーワード:アスベスト,アスベスト廃棄物,分析法,無害化処理
廃棄物学会誌,Vol.19, No.5, pp.223-238, 2008
原稿受付2008. 9. 17
* (独)国立環境研究所循環型社会・廃棄物研究センター
連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(独)国立環境研究所循環型社会・廃棄物研究センター 山本貴士