【論  文】

都市ごみ焼却灰中の不溶性塩素の消長メカニズムに関する基礎的研究
竹 本 智 典*・江 藤 次 郎**・成 岡 朋 弘**・島 岡 隆 行***

【要 旨】 都市ごみ焼却灰中には,不溶性塩素であるフリーデル氏塩 (Friedel’s salt, 3CaO・Al2O3・CaCl2・10H2O) が多く含まれている。Friedel’s saltの生成は,3CaO・Al2O3(C3A) を介することが知られているが,生成メカニズムには依然として不明な点も多い。本研究では,C3Aを介さない不溶性塩素の生成経路,不溶性塩素のエトリンガイト (ettringite, 3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O) への変化を実験により検討した。その結果,焼却灰中には,C3Aを介して生成されるFriedel’s saltとC3Aを介さず生成されるhydrocalumiteの生成経路が異なる2種類の不溶性塩素が含まれていることが認められた。また,焼却灰中のFriedel’s saltは,高いSO42-2濃度下においてettringiteに変化することも認められた。

キーワード:焼却灰,不溶性塩素,Friedel’s salt,hydrocalumite,セメント原料化
廃棄物学会論文誌,Vol.19, No.5, pp.293-302, 2008
原稿受付2007. 6. 14 原稿受理2008. 3. 21
* 九州大学大学院工学府都市環境システム工学専攻(現在太平洋セメント(株))
** 九州大学大学院工学研究院附属環境システム科学研究センター
*** 九州大学大学院工学研究院環境都市部門
連絡先:〒819-0395 福岡市西区元岡744番地
九州大学大学院工学研究院環境都市部門 島岡隆行