【論 文】
乳牛ふん尿の嫌気性自己分解によるメタン発酵スタートアップ方法およびその過程における微生物群集構造の変化
安 田 大 介*・小 林 拓 朗*・李 玉 友*・原 田 秀 樹*・岡 庭 良 安**
【要 旨】 Continuous Stirred Tank Reactor (CSTR) 型反応槽を用いて,乳牛ふん尿の自己分解によるメタン発酵のスタートアップ過程を検討した。有機酸蓄積とpH低下を防ぐため,ふん尿をTS1.5%に希釈して初期には37日間回分培養を行った。運転開始18日目に顕著なガス生成がみられ,それまで増加していたVolatile
Fatty Acid (VFA) は減少に転じた。VFA濃度が十分低下した37日以降,ふん尿を連続的に投入しはじめ,HRTを100日,50日と段階的に短縮することで,約70日間で目標のHRT30日に到達した。古細菌群集のクローン解析では,運転開始時には検出されなかったMethan-osarcina属古細菌が徐々に増殖し,自己分解が進行した期間において,ライブラリの83.3%を占めるようになった。Real-time
PCRの解析では,回分馴養中におけるガス生成速度の増大がMethanosarcina属古細菌の増殖と相関していることを示唆した。本研究の方法で,乳牛ふん尿の自己分解による良好なスタートアップが可能であり,回分培養期間のメタン生成速度の増大とVFA除去にはMethanosarcina属古細菌の増殖が寄与していることが示唆された。
キーワード:メタン発酵,スタートアップ,乳牛ふん尿,種汚泥馴致,微生物群集構造
廃棄物学会論文誌,Vol.19, No.6, pp.373-381, 2008
原稿受付2008.1.21 原稿受理2008.6.24
* 東北大学大学院工学研究科 土木工学専攻
** (社)地域資源循環技術センター
連絡先:〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-06
東北大学大学院工学研究科 土木工学専攻 李 玉友