【研究ノート】

製紙スラッジ焼却飛灰の酸性重金属溶液浄化能に関する基礎的検討
和 嶋 隆 昌*・池 上 康 之**

【要 旨】 紙のリサイクル工程では,製紙スラッジ焼却飛灰が産業廃棄物として発生する。本研究では,製紙スラッジ焼却飛灰の重金属捕集剤としての新たな有効利用法の開発を目的として,製紙スラッジ焼却飛灰の酸性重金属溶液浄化能について検討した。製紙スラッジ焼却飛灰を酸性重金属溶液に対して固液比1:100で添加することによって,酸性溶液は中和され,ほとんどの重金属は溶液中から沈殿除去された。Fe, Cr, Zn, Cd, Mn, Niの除去率は90%以上と高く,他の重金属もCu, Pbはそれぞれ89.6%, 81.6%, Mo, Bはそれぞれ51.5%, 58.5%除去された。処理後の残渣には,溶液中から沈澱除去された重金属の85〜100%が固定化された。これらの結果より,産業廃棄物である製紙スラッジ焼却飛灰が酸性重金属溶液の浄化に適用できる性能をもつことが示唆された。

キーワード:製紙スラッジ焼却飛灰,酸性排水処理,重金属除去,産業廃棄物有効利用
廃棄物資源循環学会論文誌,Vol.20, No.1, pp.68-73, 2009
原稿受付 2008.1.21  原稿受理 2008.7.10
* 秋田大学工学資源学部環境物質工学科
** 佐賀大学海洋エネルギー研究センター
連絡先:〒010-8502 秋田市手形学園町1-1
秋田大学工学資源学部環境物質工学科  和嶋 隆昌