【論 文】
模擬ごみ燃焼に伴うPCDD/F生成挙動に及ぼす炉内酸素濃度の影響
畑 中 健 志*・北 島 暁 雄*・竹 内 正 雄*
【要 旨】 焼却炉等で非意図的に生成する残留性有機汚染物質の1つであるダイオキシン類の確実な排出抑制の実現のためには,生成機構を解明し,その理解に基づいて対策技術を確立することが極めて重要である。本研究ではダイオキシン類の生成機構解明のため,炉内に供給する一次空気と二次空気の酸素濃度を10vol%から21vol%の範囲で変化させて,小型流動層実験装置による模擬ごみの燃焼実験を行い,PCDD/F生成挙動に及ぼす炉内酸素濃度の影響を調べた。この結果,一次空気の場合も二次空気の場合も酸素濃度の低下に伴ってPCDD/F生成量が増加するが,その影響は一次空気の方が大きいことがわかった。また,酸素濃度の低下に伴い生成量は増加するが,酸素濃度一定の条件下と比較すると,良好な燃焼が維持しにくい燃焼条件でも未燃炭素や多環芳香族炭化水素の酸化分解・塩化反応による生成は促進されず,同族体分布も高塩化物側へ移行しなかった。
キーワード:酸素濃度,生成機構,酸化分解,異性体分布,ダイオキシン類
廃棄物資源循環学会論文誌,Vol.20, No.4, pp.245-251, 2009
原稿受付 2008.9.29 原稿受理 2009.4.21
* (独)産業技術総合研究所 エネルギー技術研究部門
連絡先:〒305-8569 茨城県つくば市小野川16-1
(独)産業技術総合研究所 エネルギー技術研究部門 畑中 健志