【論  文】

牛ふん尿の共メタン発酵における副資材過剰投入による発酵阻害
中久保   亮*・石 田 哲 也**・松 田 從 三*・近江谷 和 彦*

【要 旨】 副資材投入による発酵阻害特性および発酵阻害指標の利用可能性を解明するために,HRT30日の中温連続メタン発酵実験において,三大栄養素 (炭水化物,たんぱく質,脂質) をそれぞれ主成分とした副資材 (パン粉,プロテイン,バター) の投入による発酵阻害実験を行った。炭水化物による発酵阻害ではTVFA (揮発性脂肪酸総量) が蓄積し,4,430mg/Lにおいてメタンガス発生量は25%減少した。たんぱく質による発酵阻害では,TVFAおよびアンモニア態窒素が蓄積し,それぞれ9,210mg/L,5,550mgNH4-N/Lにおいてメタンガス発生量は25%減少した。脂質による発酵阻害ではTVFAはほとんど蓄積しなかった。炭水化物およびたんぱく質の投入では発酵槽あたりメタンガス発生量およびTVFAを発酵阻害指標として利用可能と考えられるが,脂質の投入では,メタンガス発生量,TVFAのいずれも発酵阻害指標として有効ではなかった。

キーワード:共発酵,脂質,炭水化物,たんぱく質,嫌気性発酵
廃棄物資源循環学会論文誌,Vol.20, No.4, pp.268-277, 2009
原稿受付 2008.1.21  原稿受理 2009.5.22
* 北海道大学大学院農学研究科
** (独)土木研究所寒地土木研究所
連絡先:〒060-8589 札幌市北区北9条西9丁目
北海道大学大学院農学研究科  中久保 亮