【総  説】

物質フロー分析の近年の動向と課題物質フロー分析の近年の動向と課題
醍 醐 市 朗*・橋 本 征 二**

【要 旨】 物質フロー分析の近年の動向と課題について,対象物質,対象空間スケール,対象時間スケール,物質ストック,データ整備・推計手法,政策利用の6つの切り口から論じた。近年の動向として,対象が個別の物質や製品へと拡大していること,空間スケールが国レベルから世界レベル,地域レベルへと多様化していること,時間スケールがより長期になっていること,物質ストックへの関心が高まっていること,推計手法では産業連関分析の援用などが見られるようになっていること,マクロな物質フロー情報の政策利用が活発になりつつあることなどがあげられる。資源循環・廃棄物管理に関連する今後の研究課題としては,金属素材のような複数の元素が複合された物質の分析上の取り扱い,間接輸出入の推計,将来の物質フローの予測,物質ストックの廃棄物管理・資源再活用上の評価,共通の用語に基づくデータベースの整備,物質フロー指標が持つ課題への対応などがあげられる。

キーワード:産業エコロジー,産業代謝,物質フロー分析(MFA),サブスタンスフロー分析(SFA),持続可能な資源管理
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.5, pp.254-263, 2009
原稿受付 2009.8.3
* 東京大学大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻
** (独)国立環境研究所循環型社会・廃棄物研究センター
連絡先:〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻  醍醐 市朗