【論  文】

農村地域における有機性資源需給バランスの定量分析
―― 北海道A町における酪農経営と畑作経営の物質収支評価を事例として――
村 上 正 俊*・吉 田 文 和**

【要旨】本研究は,北海道の酪農・畑作混在地域を事例に,アンケート調査によって,家畜排せつ物や麦稈など有機性資源の処理・利用実態を解明するとともに,物質収支の視点から,畜産と畑作の間における有機性資源の需給バランス評価を試みたものである。
 この結果,雑草種子の混入など堆肥の品質を主な原因として畑作農家で堆肥の地域内循環利用が進んでいないこと,畜産農家では,経営規模が大きくなるほど家畜1頭あたりの農地面積が減少し,なおかつ麦稈などの資源を地域外から購入する傾向も高くなること,これらにより投入と生産のアンバランスが生じ,環境負荷の増大を招いていることが明らかとなった。
 さらに資源を地域内で適切に循環利用するためには,経産牛1頭あたりの飼料畑面積を約1ha確保する必要があること,現場でこれら環境負荷を把握する際に,生産履歴台帳のデータを活用したファーム・ゲート・バランス法に準じた手法が有効であることを確認した。

キーワード:有機性資源,物質収支,地域内循環利用,環境負荷,ファーム・ゲート・バランス
廃棄物資源循環学会論文誌,Vol. 20, No. 5, pp. 279-290, 2009
原稿受付 2008.7.18  原稿受理 2009.6.2
* (株)地域計画センター
** 北海道大学公共政策大学院
連絡先:〒060-0809 札幌市北区北9 条西7丁目
北海道大学公共政策大学院  吉田 文和