【論  文】

ファイバーボードの分子素材原料としてのポテンシャル
三 亀 啓 吾* , **・山 本 泰 子*・舩 岡 正 光* , **

【要旨】本研究では,ファイバーボード工業のゼロエミッション化を目指し,実際に市場に出回っているファイバーボードと,工程廃棄物として生じる成型前ファイバーを相分離系変換処理し,分子素材原料の供給拠点としてなり得るのか,その価値を検討した。その結果,工程廃棄物である蒸煮処理を受けた後Wax を添加されたファイバーは,粉砕および脱脂処理を行わなくても,分子素材誘導原料として十分に利用できるということが明らかとなった。また,接着剤添加後のサンプルから誘導されたリグノフェノールには,熱硬化処理にかかわらず,ユリア-メラミン樹脂由来の成分がごくわずかに含まれていたが,主な性状にはほとんど相違は見られなかった。炭水化物については,MDF のいずれのサンプル糖組成もコントロール試料と類似しており,MDF が分子素材原料の供給拠点として,今後大きな可能性を持っているといえる。
キーワード:相分離系変換システム,リグノフェノール,ファイバーボード,ゼロエミッション
廃棄物資源循環学会論文誌,Vol. 20, No. 5, pp. 311-319, 2009
原稿受付2007. 11. 20 原稿受理2009. 6. 12
* 三重大学大学院生物資源学研究科
** SORST JST
連絡先:〒514-8507 三重県津市栗真町屋1577
三重大学大学院生物資源学研究科舩岡研究室三亀啓吾