【特 集:持続可能な廃棄物最終処分場のあり方―埋立研究部会特集―】

廃棄物処分場における元素の消長と最終安定化に至る物質挙動解明の必要性
東 條 安 匡*

【要 旨】 埋立地に投入された廃棄物中の元素は,最終的に埋立ガス,浸出水,埋立層内のいずれかに分配されることになる。既往の研究によると,20年程度の期間では層内に残存する率が圧倒的に多く,1000年程度の予測でも消失してゆく傾向は緩慢であることが示されている。このことはたとえ放出が管理不要なレベル以下に収まっても,内部には多くの元素が残存し続けることを含意する。最終的な安定化に至る長い過程で,こうした層内残存物が何も問題を引き起こさないことを証明することが,埋立地の本質的な安全を保障するために必要であろう。これまで埋立地内の物質挙動予測を目的に作成されてきたモデルは,多くが反応の活発な時期での分解やガス生成を対象とするものである。長期の予測,特に有害物の挙動予測においては,主要な層内残存成分である分子量の大きい有機物の生成や腐植の生成を如何にして再現するかが課題となる。

キーワード:廃棄物処分場,消長,安定化,数理モデル,有機物分解
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.6, pp.278-282, 2009
原稿受付 2009.10.13
* 北海道大学大学院工学研究科 環境循環システム専攻 廃棄物処理工学研究室
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