【論  文】

燃焼排ガス中のダイオキシン類生成濃度に及ぼす酸素濃度の影響
川 端 弘 俊*・秋 田 壮 一**・小 野 英 樹*・碓 井 建 夫*

【要 旨】 本研究では,実験室規模の燃焼炉を用いて,1,073Kの温度において燃焼物として用いたポリ塩化ビニル (PVC) 粉末試薬の添加速度ならびに供給O2-N2ガス組成の混合割合を広範囲に変化させて燃焼実験を行い,0.1vol%O2から35vol%O2に及ぶ幅広い排ガス中の残存O2濃度とダイオキシン類生成濃度との関連性を調査した。
 残存O2濃度が3vol%付近で,排ガス中ダイオキシン類濃度は極大値を示し,O2濃度増加とともにダイオキシン類濃度が急激に減少するが,約10vol%以上ではダイオキシン類濃度の減少は非常に緩やかになる。一方,残存O2濃度が0.1vol%で,CO濃度が高い還元雰囲気においても,ダイオキシン類濃度は減少する。
 完全燃焼条件下では,高温域での燃焼ガスの滞留時間が短い場合,高塩素化度のPCDFs濃度が高くなるフィンガーパターンを示す。一方,滞留時間が長い場合,低塩素化度のPCDFs濃度が高くなる逆のフィンガーパターンとなる。また,不完全燃焼条件下におけるPCDFs濃度分布は,塩素化度に依存しないフラットなフィンガーパターンになる傾向がある。高温域における燃焼ガスの長い滞留時間は,ダイオキシン類のTotal濃度を減少させるが,低塩素化度の同族体濃度が増加することによりTEQ濃度が減少しない,あるいは増加する場合もある。

キーワード:残存O2濃度,ダイオキシン類,都市ごみ・廃棄物燃焼,PVC燃焼,還元雰囲気
廃棄物資源循環学会論文誌,Vol. 20, No. 6, pp. 343-351, 2009
原稿受付2008. 6. 20  原稿受理2009. 7. 6
* 大阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻
** 大阪大学大学院(現在阪和興業(株))
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大阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻  川端 弘俊