【論 文】
最終処分場から採取したキレート処理溶融飛灰中重金属の長期安定性の評価
辻 本 浩 子*・王 寧*・肴 倉 宏 史**・大 迫 政 浩**
【要 旨】 溶融飛灰中の重金属の溶出を抑制させる方法として,液体キレート剤を用いた薬剤処理法が主流であるが,処理飛灰中の金属キレート化合物の長期安定性が懸念されている。本研究では,溶融飛灰のみ埋立処分を行い埋立開始から8年経過した最終処分場を対象に,表層から深さ5mまでの飛灰試料を採取し,金属キレート化合物の存在量の変化および重金属の溶出特性について調査した。
その結果,埋立後の試料では金属キレート化合物の存在量の減少はPbで著しく,処理直後の10%以下となった試料も確認され,埋立後に金属キレート化合物が分解した可能性が高いことが示された。しかし,溶出試験でのPbの溶出濃度および処分場浸出水の実測値はすべて0.031mg/L以下と極めて低かった。pH依存性試験を実施したところ,pH14の条件でも鉛の溶出率は全含有量の10%以下であり,キレート化合物から分解したPbは強アルカリ性でも溶出しにくい化学形態であると推測された。
キーワード:溶融飛灰,金属キレート化合物,最終処分場,長期安定性,pH依存性試験
廃棄物資源循環学会論文誌,Vol.21, No.2, pp.86-93, 2010
原稿受付 2009.5.7 原稿受理 2010.2.10
* (株)環境管理センター
** (独)国立環境研究所
連絡先:〒192-0154 東京都八王子市下恩方町323-1
(株)環境管理センター 辻本 浩子