【特 集:自動車リサイクルの進化】

自動車リサイクルと化学物質管理
酒 井 伸 一*

【要 旨】 自動車破砕残渣 (ASR) の物理化学性状や自動車素材の資源性と有害性の視点から,自動車リサイクルのあり方を考察した。ASRに含有される鉛濃度は,日本では1990年前後から直近に至るまで,1,000〜2,000mg/kgレベルで大きく変化していない。鉛使用量の削減に向けた産業界の自主的取り組みがはじまって,既に10年以上が経っており,削減効果の検証が求められる。ASRには,PCBや臭素系難燃剤成分も含有されるため,その適切な分解も必須である。欧州で導入された廃電子電気製品に対するRoHS制度やELV政令における重金属類規制は,アジア諸国への導入が図られつつあり,日本もこうした動きと協調するためにも類似の制度導入が望まれる。

キーワード:自動車リサイクル,ASR (Automobile Shredder Residues),鉛,臭素系難燃剤,化学物質管理
廃棄物資源循環学会誌,Vol.21, No.2, pp.103-110, 2010
原稿受付 2010.3.10
* 京都大学環境保全センター
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