【特集:衣類とごみ― おしゃれと環境―】

衣類の消費と廃棄・循環の実態と課題
木村照夫*

【要旨】循環型社会形成の重要性からリサイクルを義務づける数多くの法律が施行されている中で,繊維製品に関してはいまだ法律が施行されていない。現在,回収された衣類廃棄物の大半は中古衣料,反毛およびウエスとしてリサイクルされているが,衣類に関するリサイクル率は20% 程度に留まっている。リサイクル率が低い大きな理由は繊維製品の多様性によるリサイクルの難しさにある。本稿では繊維製品の中でもわれわれに一番身近な衣類を対象に,リサイクルの現状と課題を整理している。さらに,筆者らの衣類廃棄物を用いた木材代替材料ならびに天然繊維複合材料としてのリサイクルの試みを紹介している。また,環境負荷の小さなリサイクルを推進する上でLCA解析が重要であること,ならびにリサイクル推進には技術開発のみでなく国民の意識改革が必要であることを述べ,教育用に作成された漫画本の反響についても言及している。

キーワード:衣類廃棄物,循環型社会,リサイクル,環境負荷,環境教育
廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 3, pp. 140-147, 2010
原稿受付2010. 4. 1
* 京都工芸繊維大学大学院先端ファイブロ科学部門
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