【特 集:循環型社会,低炭素化に応える都市ごみ焼却処理―焼却研究部会特集―】

都市ごみ焼却施設の窒素酸化物自主規制値緩和による発電量向上に関する検討
古 林 通 孝*・安 田 直 明**

【要 旨】 都市ごみ焼却施設の発電量向上策の一つの考え方として,窒素酸化物自主規制値緩和を取り上げ,窒素酸化物排出濃度の違いによる周辺環境への影響の度合いと,期待される発電増加量や温室効果ガス削減効果について整理した。
 都市ごみ焼却施設からの窒素酸化物排出濃度は,触媒脱硝装置などを採用しなくても,100〜120ppm程度が期待される。そこで,簡易な大気拡散計算により,国内の建設予定施設の周辺地域の大気環境濃度を推算したところ,排出濃度が50ppm (触媒脱硝装置を採用) から120ppm (触媒脱硝装置を不採用) に緩和されても,二酸化窒素の環境基準に対して,1〜4%程度の増加にとどまることが推測された。また,施設規模150ton/day\_mls00d7\/2炉の都市ごみ焼却施設について,自主規制値が50ppmから120ppmまで緩和されると,発電量として2,205MWh/年の増加が見込め,この発電増加量は1,237ton/年の二酸化炭素削減量に相当することが推察された。

キーワード:都市ごみ焼却施設,窒素酸化物,自主規制値緩和,発電量向上
廃棄物資源循環学会誌,Vol.21, No.6, pp.395-403, 2010
原稿受付 2010.10.2
* 日立造船(株) 事業・製品開発本部技術研究所 環境・ソリューション技術グループ
** (株)IHI環境エンジニアリング エンジニアリング部
連絡先:〒551-0022 大阪市大正区船町2-2-11
日立造船(株) 事業・製品開発本部技術研究所 環境・ソリューション技術グループ  古林 通孝