【論  文】

炭化・過熱水蒸気処理・爆砕による木質バイオマスの化学成分変化に関する研究
松 永 安希子*・大 西   龍**・入 江 満 美*・山 口 武 則*・牛久保 明 邦*

【要旨】木質バイオマスを原料とした炭化・過熱水蒸気処理・爆砕などの処理技術が提案されているものの,これらの処理物を比較検討した研究は少ないため,本研究では3つの処理物について比較検討した。温度400℃処理時間60分で炭化した場合,アルコール・ベンゼン抽出物とホロセルロースの分解が進み,固定炭素が増加し,質の高い有効な燃料が製造できる。しかし,爆砕・過熱水蒸気処理に比べて,炭素の損失が極めて大きい処理であることが示された。蒸気温度200℃,処理時間60分の過熱水蒸気処理と爆砕において,広葉樹を原料とした場合,アルコール・ベンゼン抽出物が増加し,ホロセルロースの一部が分解された。
 過熱水蒸気処理は,固定炭素量が増加し,発熱量も高くなるが,炭化処理をした木材ほど燃料としての質は高くない。しかし,樹木中の炭素を有効に利用する場合,過熱水蒸気処理は炭素の損失が少なく,適していると考えられる。

キーワード:炭化,過熱水蒸気処理,爆砕,木質バイオマス,炭素収支
廃棄物資源循環学会論文誌,Vol.22, No.2, pp.149-156, 2011
原稿受付 2009.9.14  原稿受理 2010.12.27
* 東京農業大学国際食料情報学部国際農業開発学科
** 大阪府立大学生命環境科学研究科,
NPO法人 エコデザインネットワーク
連絡先:〒156-8502 東京都世田谷区桜丘1-1-1
東京農業大学国際食料情報学部国際農業開発学科  松永安希子