【特 集:サステイナブルなサイクル・シティ―自転車と3R―】

安全なサイクルシティに向けて
小 林 成 基*

【要 旨】 東日本大震災を契機に,日本人は新しいライフスタイルへの転換を余儀なくされている。新しいライフスタイルの一翼は,自転車が担うことになるであろうと考える。燃料を使わずに移動や運搬が可能な自転車は,さまざまな問題を抱えつつも,被災地で活躍している。被害を受けなかった,あるいは被害が少なかった地域では,自転車を利用することでエネルギーを節約するほか,自転車を被災地に送るという形の支援が行われている。
 視点を都市に移せば,都市の自転車利用環境は危険に満ちていて,不慣れな自転車通勤者の増加はさまざまな問題を起こしている。そうした問題の原因の多くはわが国の法律や制度にある。しかし,為政者のみならず国民の多くが,原因がつくり出す構造的な問題について正確に現状を把握しておらず,誤った既成概念にとらわれている。本稿ではそうした「勘違い」の構造と実態を明確にし,これからの街づくりに必要だと考える海外の事例を紹介し,その政策や意識について私見を述べた。

キーワード:東日本大震災,自転車,自転車安全利用五則,道路交通法,弱者優先・公共優先
廃棄物資源循環学会誌,Vol.22, No.3, pp.204-214, 2011
原稿受付2011. 4. 27
* 特定非営利活動法人自転車活用推進研究会
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