【特 集:サステイナブルなサイクル・シティ―自転車と3R―】

ライフサイクルアセスメントによる都市内移動手段のCO2排出量評価
――自転車は地球にやさしい乗り物か?――

加 藤 博 和*・山 本 充 洋*・柴 原 尚 希*

【要 旨】 人間活動起源CO2排出量の約2割を占める運輸部門を低炭素化するためには,各交通システムのCO2排出量を適切に評価していく必要がある。本稿では,低炭素な移動手段といわれる自転車およびLight Rail Transit (LRT) を取り上げ,それらが乗用車に比べどの程度のCO2削減効果を有するかを,ライフサイクルアセスメント (LCA) を適用して評価している。分析の結果,自転車を車両とインフラから構成されるシステムとしてとらえる場合,そのライフサイクルCO2は乗用車の走行によるCO2に比べ人kmベースで83〜96%低くなった。しかし,既存道路上に自転車専用レーンやLRTを整備する場合,乗用車からある程度の割合で転換が生じなければ,逆にCO2排出量が全体で増加してしまうことが示された。また,LRTよりも電動アシスト自転車の人kmあたりCO2排出量の方が小さいことも明らかになった。

キーワード:運輸交通部門,拡張ライフサイクル環境負荷(ELCEL),感度分析,自転車,Light Rail Transit(LRT)
廃棄物資源循環学会誌,Vol.22, No.3, pp.220-227, 2011
原稿受付 2011.5.23
*名古屋大学大学院環境学研究科
連絡先:〒464-8603 名古屋市千種区不老町C1-2 (651)(工学研究科9号館内)
名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻 都市持続発展論講座