【特 集:水銀条約制定に向けての国際動向】

水銀条約制定に向けた国際交渉の経緯および現状
早 水 輝 好*

【要 旨】 水銀による地球規模でのリスクの低減のため,国連環境計画 (UNEP) における水銀条約の制定に向けた交渉が2013年までの合意を目指して進められている。交渉は2010年6月から開始され,2011年1月には第2回政府間交渉委員会 (INC2) が千葉市で開催された。水銀の供給,貿易,使用,排出などの削減・廃絶や,適正保管,廃棄物管理などが交渉事項であり,INC2における議論を踏まえ,第3回政府間交渉委員会 (INC3) での議論のための条約の案文 (Draft text) が事務局で作成されることとなった (7月に公表済み)。INC3は本年10月末にケニアのナイロビで開催される予定であり,それに先立って9月末に神戸市でアジア太平洋地域会合が開催された。2013年に最終的に条約の採択・署名を行う外交会議は日本で開催することが決定されており,日本は「水俣条約」を実現するため,水俣病経験国として条約交渉に積極的に貢献すべく取り組んでいる。

キーワード:水銀,国連環境計画,政府間交渉委員会,水俣条約
廃棄物資源循環学会誌,Vol.22, No.5, pp.344-351, 2011
原稿受付2011. 8. 2
* 環境省環境保健部環境安全課
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