【論  文】

N2-HCl雰囲気におけるCaO-SiO2-Al2O3溶融スラグからの鉛化合物の揮発挙動
河内山 拓 哉*・景 山 広 樹*・長 田 昭 一*・窪 田 光 宏*・松 田 仁 樹*

【要 旨】 N2-HCl 雰囲気におけるCaO-SiO2-Al2O3溶融スラグからの鉛化合物の揮発挙動を実験室規模の加熱装置を用いて,N2-HCl混合ガス流量5×10?6m3・s?1 (ガス流速3.61×10?3m・s?1)の一定の条件下,HCl分圧0.0017〜0.0067atm,溶融温度1,673〜1,773Kの範囲で調べた。スラグ試料には20〜40wt% CaO, 30〜60wt% SiO2, 20〜40wt% Al2O3の範囲で混合調整した3種類を用い,スラグ中のPbO初期含有量は2,000mg・kg?1で一定とした。溶融スラグからの鉛揮発速度はスラグ中に残存するPbOの含有量の経時変化に基づいて求めた。
その結果,N2-HCl雰囲気におけるCaO-SiO2-Al2O3溶融スラグからの鉛化合物の揮発速度はN2-O2雰囲気の値に比べて大きく,いずれのスラグ試料に対しても溶融スラグからの鉛化合物の見かけの揮発速度定数はHCl分圧にほぼ直線的に比例することが認められた。また,溶融スラグからの鉛化合物の揮発速度はCaO組成比の大きい低粘度の溶融スラグほど大きくなること,さらには溶融温度が高くなるほど大きくなることが認められた。

キーワード:塩化水素,鉛化合物,溶融スラグ,都市ごみ,揮発速度
廃棄物資源循環学会論文誌,Vol.22, No.6, pp.354-360, 2011
原稿受付 2011.3.23  原稿受理 2011.8.29
* 名古屋大学大学院工学研究科 エネルギー理工学専攻
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名古屋大学大学院工学研究科 エネルギー理工学専攻  松田 仁樹