【特 集:金属資源の物質フローとリサイクル・廃棄物管理―物質フロー研究部会特集―】

金属資源マテリアルフローの把握と分析
中 條   寛*

【要 旨】 金属資源の安定的利用を図るための方策の一つにリサイクルがあり,その際重要となるのが国内に既に存在するストックとしての「都市鉱山」である。マテリアルフローモデルを用いた試算では,たとえば,コバルトは6年分,タングステンは7年分,ネオジムは5年分程度が市中の製品中に含まれた形でストックされている。分散的な一次処理 (前処理=濃縮) と備蓄のシステムなどを組み合わせることで,有用資源を含む使用済み製品等を活用して,新たな資源を輸入せずとも定常的に資源を使い回していく社会に近づけることができる。一方,人間1人に必要とされるベース金属の資源量は,経済発展レベルに応じて増加するが,究極的には一定の値に落ち着く傾向にある。これに基づき,地球規模でみて人類に必要となる金属資源量を推計し,埋蔵資源量と比較することで,どんなタイミングでどのようなリサイクルレベルが必要とされるかの示唆を得ることができる。

キーワード:金属資源,マテリアルフロー,市中ストック量,1人あたり鉄鋼需要量
廃棄物資源循環学会誌,Vol.22, No.6, pp.426-436, 2011
原稿受付2011. 11. 29
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