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No.5 巨大災害廃棄物対策
 

No.5 巨大災害廃棄物対策

平成27年9月 第26巻 第5号

目次

巻頭言

災害廃棄物対策のさらなる推進に向けて……鎌形浩史 333 (PDFはこちら

特集 巨大災害廃棄物対策

廃棄物処理のための法制度における災害対策の意義…………山田智子 335
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災害廃棄物対策の強化に向けた国の取り組みについて……切川卓也 341
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阪神・淡路大震災から20年大規模災害に備えた廃棄物処理の経験と教訓……太田博之 354
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愛知県における災害廃棄物処理の経験と災害廃棄物対策の取り組み……岩川 誠 362
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広域巨大震災時の自治体支援受援体制と廃棄物対策のあり方……中林一樹 369
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東日本大震災における災害廃棄物処理のアーカイブ化および律速要因の検討……浅利美鈴・多島 良・吉岡敏明・千葉 実・千葉幸太郎・遠藤守也 382
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災害廃棄物の選別技術・システムのあり方……勝見 武・切川卓也 397
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廃棄物アーカイブシリーズ 『ゴミ戦争』の記録

第4回:千葉県の不法投棄40年……菊地通雅・大石 修・髙梨秀一・原  雄 411 (PDFはこちら

会議報告

第2回3R国際学会 (韓国・大田) の開催・参加報告……浅利美鈴 416 (PDFはこちら

支部特集/支部だより

支部特集:関東支部に所属する研究機関等の活動紹介…… 418 (PDFはこちら
支部だより:関東支部「セミナー」開催報告…… 420 (PDFはこちら

書評

田中 勝 著:ごみは宝の山……髙橋正光 422
広瀬立成 著:もったいない社会をつくろう――後始末科学のススメ――……中村一夫 423

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要旨

廃棄物処理のための法制度における災害対策の意義

山 田 智 子*

【要 旨】 2015年7月に制定・公布された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び災害対策基本法の一部を改正する法律」には,環境省がこれまで進めてきた災害廃棄物対策の一層の推進力となることが期待されている。本改正の目的は,それに向けて,災害廃棄物対策に取り組む関係者の認識を一致させ,関係者が協働するときの大きな方向性を示すことに置かれた。そのため,改正法の主眼も,既存の廃棄物処理制度を実質的に改正することよりは,災害廃棄物対策の基本的な考え方とその全体像,すなわち法的枠組みを整理し,制度として明示することに置かれた。この改正法の主な法的意義は,(1)災害の規模に応じて災害廃棄物対策のための制度を整備したこと,(2)災害廃棄物処理に係る関係主体の拡大とその役割の再整理を行ったこと,(3)国が廃棄物処理を代行する仕組みを固定化したこと,(4)防災法制において個別の行政分野 (災害廃棄物対策) の拡充を行ったこと,に求めることができる。


キーワード:廃棄物の処理及び清掃に関する法律,災害対策基本法,災害廃棄物,災害対策,災害法制

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.5, pp.335-340, 2015
原稿受付 2015.8.27

*環境省廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館
環境省廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課  山田 智子

災害廃棄物対策の強化に向けた国の取り組みについて

切 川 卓 也*

【要 旨】 東日本大震災の教訓を踏まえ,大規模な災害が発生した場合に生じる膨大な量の災害廃棄物に適正かつ円滑・迅速に対応するため,災害廃棄物処理体制を準備しておくことが重要である。環境省では有識者会議において災害廃棄物対策について総合的な検討を進め,東日本大震災における災害廃棄物対策のアーカイブ化や,災害廃棄物処理に関する技術・システムの検証等を行い,自治体等が災害廃棄物への備えを行うための情報を整理した。
2015年には,「廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び災害対策基本法の一部を改正する法律」(平成27年法律第58号) が制定され,この運用,実施を通じて,全国単位,地域ブロック単位等各レベルで災害廃棄物処理システムの強靱化を進め,地方公共団体等と十分に連携しつつ必要な支援を行えるよう,サポート体制の強化を進めている。


キーワード:災害廃棄物,東日本大震災,強靭化,広域連携

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.5, pp.341-353, 2015
原稿受付 2015.8.19

*環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館
環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課 切川 卓也

阪神・淡路大震災から20年大規模災害に備えた廃棄物処理の経験と教訓

太 田 博 之*

【要 旨】 阪神・淡路大震災から20年を迎え,改めて当時の災害廃棄物の処理の考え方を振りかえり,また,東日本大震災での支援を通して得た経験・教訓から,今後の大規模災害時における災害廃棄物処理への備えについて提言する。


キーワード:災害廃棄物処理,阪神・淡路大震災,東日本大震災

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.5, pp.354-361, 2015
原稿受付 2015.7.27

*神戸市環境局事業部管理課

連絡先:〒650-8570 神戸市中央区加納町6-5-1 神戸市役所3号館6階
神戸市環境局事業部管理課  太田 博之

愛知県における災害廃棄物処理の経験と災害廃棄物対策の取り組み

岩 川   誠*

【要 旨】愛知県では,阪神淡路大震災や2000(平成12)年の東海豪雨による災害廃棄物処理の経験を踏まえ,県内市町村や民間事業者団体との応援協定の締結や,市町村に対して災害廃棄物処理計画の策定に向けたガイドラインの作成等の支援を行ってきた。現在は,将来の発生が想定されている南海トラフ地震等の大規模災害に対して,発災後における県民生活および産業活動の早期の復旧・復興を図れるよう,大量に発生する災害廃棄物に速やかに対応するため,「愛知県災害廃棄物処理計画」の策定に向けた検討を進めている。これまで,2014(平成26)年5月に公表した愛知県における新たな被害想定や,災害廃棄物対策指針 (2014(平成26)年3月 環境省) 等,最新の知見を踏まえた災害廃棄物発生量の推計や,愛知県内における地域ごとの災害廃棄物処理体制の構築に向けた検討を行ってきた。これまでの成果を踏まえ,2015年度も引き続き,市町村における災害廃棄物処理計画の策定を支援するとともに,県内の処理体制のあり方等,愛知県災害廃棄物処理計画の検討を進めていく。


キーワード:災害廃棄物,災害廃棄物処理計画,相互応援協定,東海豪雨

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.5, pp.362-368, 2015
原稿受付 2015.7.31

*愛知県環境部資源循環推進課

連絡先:〒460-8501 名古屋市中区三の丸3-1-2
愛知県環境部 資源循環推進課 一般廃棄物グループ  岩川 誠

広域巨大震災時の自治体支援受援体制と廃棄物対策のあり方

中 林 一 樹*

【要 旨】本論は,南海トラフ地震や首都直下地震等の超広域巨大災害時の災害廃棄物対策のあり方を考察した。災害廃棄物とは,日常廃棄物とは異なり,被災者には思い出や生きた証としての価値をもっているため,処理の初動段階では迅速な処理よりも被災者の思いを尊重した対応が重要である。処理の段階では,迅速な処理とともに環境悪化の回避と地域環境の保護に重点を置いた取り組みが必要である,そのためには,超広域巨大災害であるほど,残された資源の公平で有効な活用が不可欠であり,都道府県をリーダーとする県・市町村・民間事業者のグループを支援活動単位として,都道府県と国とが支援受援の体制づくりを調整する仕組みの構築が必要である。一方,受援体制は市町村が受援単位となるため,自治体は自らが被災して行政機能が低下することを想定した,災害廃棄物処理機能継続計画 (廃棄物BCP) の検討が不可欠である。


キーワード:東日本大震災,首都直下地震,南海トラフ地震,廃棄物BCP,支援受援体制

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.5, pp.369-381, 2015
原稿受付 2015.8.8

*明治大学政治経済学研究科・危機管理研究センター

連絡先:〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1
明治大学政治経済学研究科・危機管理研究センター  中林 一樹

東日本大震災における災害廃棄物処理のアーカイブ化および律速要因の検討

浅 利 美 鈴*・多 島   良**・吉 岡 敏 明***・千 葉   実****・千 葉 幸太郎*****・遠 藤 守 也******

【要 旨】東日本大震災では,災害廃棄物等の処理においても多くの知見や技術が蓄積されてきたが,被災自治体の担当職員の異動や時間経過に伴う記憶の薄れ等により,これらの知見や技術が伝承されることなく失われることは回避しなければならない。そこで,処理プロセスを俯瞰した情報のアーカイブ化を行うと同時に,それを利用して,4重点地区を対象に,災害廃棄物の処理に影響を与える要因を抽出し,中でも処理完了を早める,または遅らせる律速要因を特定した。また,それらを踏まえて,今後の対策に向けて備えるべき点を,事前の計画立案,初動体制の整備,都道府県・市町村・民間事業者との連携・協力の強化,大規模災害を対象とした技術的な検討,空地の有効活用に向けた事前の備え,仮置場の適正管理,最終処分容量や再生利用先の確保,処理先に係る手続等の簡素化,人的ネットワークの構築・人材育成,広報・住民・被災者への対応の10点に整理した。


キーワード:大規模災害,災害廃棄物,律速要因,計画,仮置場

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.5, pp.382-396, 2015
査読付展望論文
原稿受付 2015.7.6  原稿受理 2015.8.21

*京都大学環境科学センター
** (国研)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター
*** 東北大学大学院 環境科学研究科
**** 岩手県環境生活部 廃棄物特別対策室
***** 宮城県震災復興・企画部
****** 仙台市環境局廃棄物事業部

連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学環境安全保健機構 附属環境科学センター  浅利 美鈴

災害廃棄物の選別技術・システムのあり方

勝 見   武*・切 川 卓 也**

【要 旨】 東日本大震災では地震と津波により約3,100万tonという膨大な量の災害廃棄物が発生したが,岩手県と宮城県の沿岸市町村にさまざまの仮設の処理施設が設置され,大規模な処理が実施されたところであり,その技術システムに関する知見等を整理して将来の災害対応のために活用できるようにしておくことは重要事項である。環境省「大規模災害発生時における災害廃棄物対策検討会」に設置された技術・システム検討WGでは,災害廃棄物処理の一連の流れを対象に,将来想定される大規模災害時の災害廃棄物の処理計画を策定する際,各自治体が自らの地域条件に類似する事例を参照することができるよう,東日本大震災の処理事例の整理を実施した。本稿では,(一社)日本建設業連合会加盟企業が担当した処理区についての情報を中心に検討を行い,各処理区の処理の概要,選別物を受け入れた受入先の受入基準や品質,混合状態の廃棄物の選別システムと処理フローに関して一定の整理を行った,その概要を記したものである。


キーワード:災害廃棄物,選別,再生利用,受入基準

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.5, pp.397-410, 2015
原稿受付 2015.8.28

* 京都大学大学院地球環境学堂
** 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課

連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学大学院地球環境学堂  勝見 武

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