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No.6 リサイクルを成長産業とするための戦略
 

No.6 リサイクルを成長産業とするための戦略

平成27年11月 第26巻 第6号

目次

巻頭言

廃棄物処理の技術開発を想う……澁谷榮一 427 (PDFはこちら

特集 リサイクルを成長産業とするための戦略

持続可能な社会を支えるリサイクル産業の振興に向けて…………酒井崇行 430
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わが国のリサイクルビジネスの将来展望……林 孝昌 440
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リサイクルビジネス推進に向けた法整備の現状と課題――排出事業者責任の限界と資源循環ビジネスの可能性――……佐藤 泉 449
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持続可能な社会を実現させるための金融の役割とリサイクルビジネス……竹ケ原啓介 460
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小型家電の宅配便回収・リサイクルについて……黒田武志 469
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日本発! リサイクルメジャーの創出に向けて……今井佳昭 474
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わが国の循環産業のアジア展開の戦略と課題……藤吉秀昭・滝澤 元 486
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廃棄物アーカイブシリーズ 『ゴミ戦争』の記録

第5回:神戸市におけるごみ処理行政の変遷――高度成長期のごみ処理問題を中心として――……大下昌宏 499 (PDFはこちら

平成27年度廃棄物資源循環学会第2回セミナー報告

バイオマスのリサイクル3
身近な食品廃棄物のリサイクルの促進に向けて……秦三和子 504 (PDFはこちら

書評

細田衛士 著:資源の循環利用とはなにか――バッズをグッズに変える新しい経済システム――……沼田大輔 506
稲村光郎 著:ごみと日本人――衛生・勤倹・リサイクルからみる近代史――……山崎達雄 507
倉阪秀史 著:環境政策論 (第3版) 環境政策の歴史及び原則と手法……吉岡敏明 508

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要旨

持続可能な社会を支えるリサイクル産業の振興に向けて

酒 井 崇 行*

【要 旨】 わが国ではこれまで,大量生産・大量消費・大量廃棄型から循環型へと経済システムを移行させていくためのリサイクル制度等を順次整備してきており,また,リサイクル技術開発や3R設備導入等,事業者の取り組みへの各種支援も講じてきたところである。当初の目的である廃棄物対策で一定の成果は得られており,各制度を支える形で,リサイクル関連産業の成長や雇用の創出にも繋がったといえる。
今後,人口減少や産業構造の変化等により国内の事業環境の厳しさが増す一方,新興国の経済成長に伴う廃棄物処理・リサイクルへの需要の増加や,欧州の資源効率政策といった国際動向も見据えれば,わが国のリサイクル関連産業にとって多くのビジネスチャンスも存在している。リサイクル産業をわが国の今後の成長産業として振興していくため,新興国需要の取り込み,再生材需要の拡大,動脈産業との連携,新たなビジネスモデルの創出等といった方向性について検討する。


キーワード:リサイクル関連産業,資源循環政策,資源効率,事業の高度化

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.6, pp.430-439, 2015
原稿受付 2015.10.21

*経済産業省 産業技術環境局リサイクル推進課

連絡先:〒100-8901 東京都千代田区霞ヶ関1丁目3番1号
経済産業省 産業技術環境局リサイクル推進課  酒井 崇行

わが国のリサイクルビジネスの将来展望

林   孝 昌*

【要 旨】 本稿では,業界や政策動向に加え,定量・定性的なデータを用いた分析を基にした著者の知見を踏まえて,わが国のリサイクルビジネスの将来展望を検証する。
まず,これからのリサイクルビジネスは「大規模化」する。自治体財政逼迫や高度な再資源化へのニーズの高まりに応じて,許認可や業態の壁を越えた広域処理やリサイクルを担う主要事業者に求められる事業規模は拡大する。
次に,リサイクルビジネスは「低炭素化」する。エネルギー特別会計予算の規模拡大や,グローバル社会の要請を受けて,資源循環がもたらす低炭素化効果の定量的な把握が求められている。結果,競争力強化にも資する低炭素化の動きは加速する。
最後に,リサイクルビジネスは「グローバル化」する。少子高齢化の進展を背景とした成長には海外市場獲得が不可欠となる。アジア諸国等の経済成長,現地環境・衛生ニーズの高まりとわが国事業者の大規模化はグローバル化進展の後押しとなる。


キーワード:リサイクルビジネス,大規模化,低炭素化,グローバル化

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.6, pp.440-448, 2015
原稿受付 2015.10.8

*(一社)資源循環ネットワーク

連絡先:〒805-0062 福岡県北九州市八幡東区平野1-1-1
(一社)資源循環ネットワーク 林 孝昌

リサイクルビジネス推進に向けた法整備の現状と課題
――排出事業者責任の限界と資源循環ビジネスの可能性――

佐 藤   泉*

【要 旨】 現在の廃棄物の処理及び清掃に関する法律 (以下,廃棄物処理法) は,一般廃棄物と産業廃棄物の区分による処理責任の明確化,排出事業者責任および処理業者への規制強化という観点から,不適正処理および不法投棄防止の対策を進めてきた。しかし,このような硬直的規制は,排出事業者に大きな負担となっていることに加え,資源循環を阻害する側面がある。循環型社会形成推進基本法が,循環資源という概念のもとに資源循環を促進しようとしている点を,廃棄物処理法に反映することが必要である。資源循環を進めるうえで,排出事業者と処理業者の双方にとって「使い勝手のよい」「安全・安心」な法律が求められているのである。そこで,廃棄物処理法が専ら物について,循環資源として規制緩和を行っている点をもとに,専ら物の範囲を明確化するとともに拡大し,さらに再生事業者登録制度を活用し,処理基準の強化等を取り入れて,優良な資源循環ビジネスを育成する法制度のあり方を検討する。


キーワード:循環資源,処理基準,委託基準,マニフェスト,専ら物

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.6, pp.449-459, 2015
原稿受付 2015.10.3

*佐藤泉法律事務所

連絡先:〒104-0061 東京都中央区銀座1-16-6 鈴常ビル4階
佐藤泉法律事務所  佐藤 泉

持続可能な社会を実現させるための金融の役割とリサイクルビジネス

竹ケ原 啓 介*

【要 旨】 持続可能な社会の実現に向けて資金の流れを変える「環境金融」が関心を集めている。これをリサイクルビジネスとの関係でみれば,一義的には,環境ビジネスへの投融資に伴うリスクアセスメント等を通じ,ビジネスモデルの強化に貢献する直接的な関与の強化が期待される。このビジネスに直接の接点をもつリースが,近年,3R関連サービスの高度化を通じた差別化に注力しているのも,その一環といえる。また,金融の新たな役割として注目される「非財務的価値」に着目した企業評価も,ユーザーである排出企業の行動に影響し,高度な3Rサービス指向を高めるなどの形で,リサイクルビジネスの強化に間接的に貢献する可能性がある。長期的には,循環型社会の進展が銀行のビジネスモデルそのものを変化させる可能性が指摘されるなど,今後,3Rと金融との接点は多面的に拡大していくことが予想され,これを双方に有意義なものに発展させていくための努力が求められる。


キーワード:環境金融,21世紀金融行動原則,環境ビジネス,非財務的価値,リサイクルビジネス

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.6, pp.460-468, 2015
原稿受付 2015.9.28

*(株)日本政策投資銀行 環境・CSR部

連絡先:〒100-8178 東京都千代田区大手町1-9-6  大手町フィナンシャルシティ サウスタワー
(株)日本政策投資銀行 環境・CSR部  竹ケ原 啓介

小型家電の宅配便回収・リサイクルについて

黒 田 武 志*

【要 旨】 リネットジャパン(株)は,2014年1月に小型家電リサイクル法の全国認定を取得し,インターネットと宅配便を活用したパソコン・小型家電の回収を全国展開している。また自治体と積極的に連携し,官民連携した取り組みとして成果を上げている。特に2015年5~6月に実施した京都市とのパソコン無料回収の実証事業では,2カ月間で全世帯の1%に相当する利用数があったことから宅配便回収の有効性が示された。


キーワード:小型家電リサイクル,パソコンリサイクル,レアメタルリサイクル,宅配便回収

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.6, pp.469-473, 2015
原稿受付 2015.10.19

*リネットジャパン(株)

連絡先:〒474-0055 愛知県大府市一屋町3-45
リネットジャパン(株)  黒田 武志

日本発! リサイクルメジャーの創出に向けて

今 井 佳 昭*

【要 旨】 2001年1月に「循環型社会形成推進基本法」が完全施行された。わが国は,循環型社会の形成を目指し,企業活動等に伴い発生する多種多様な廃棄物を,安全かつ総合的に,きっちりと後始末 (処理および再資源化) できる廃棄物処理業と資源リサイクル業が一体となった静脈産業の誕生を期待した。あれから15年たったが,まだ発展途上の状態である。
静脈産業は,動脈産業と一心同体,表裏一体の関係でありステークホルダーでもある。人口減少や高齢化社会の到来が明らかになった今,多くの動脈産業は経済成長が期待されるアジア地域へ生産拠点を移転しはじめた。そして静脈産業も製造産業のパートナーとしてアジア地域を市場として意識せざるをえなくなった。アジア地域には欧米のリサイクルメジャーが既に進出している。国内の静脈産業が将来,市場を争う相手は,欧米のリサイクルメジャーであることはほぼ間違いない。欧米のリサイクルメジャーと比肩できる企業を作り上げる必要がある。今こそ,日本発! リサイクルメジャーを作りあげるときである。


キーワード:循循環型社会の形成,動脈産業のステークホルダー,人口減少,アジア地域,欧米のリサイクルメジャー

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.6, pp.474-485, 2015
原稿受付 2015.10.26

*スズトクホールディングス(株) 遵法・環境室 兼務 小型家電リサイクル推進室

連絡先:〒100-0004 東京都千代田区大手町1-7-2 東京サンケイビル15階
スズトクホールディングス(株) 遵法・環境室 兼務 小型家電リサイクル推進室  今井 佳昭

わが国の循環産業のアジア展開の戦略と課題

藤 吉 秀 昭*・滝 澤   元**

【要 旨】 廃棄物分野の産業の海外展開は最近に始まったことではない。まずは汚水処理分野の浄化槽や医療廃棄物用の小型焼却炉が消極的に売り出されてきたが,安い外国製の製品に負けている。本報ではわが国の循環産業がアジアへの展開を狙った場合,何が必要かを論じる。そのための必要情報としてアジアの経済発展の状況とごみ発生量の増加を示したうえで,そのごみを処理する市場がどのように増えるのかを示す。そのアジアで大型ごみ焼却発電の発注が少し出てきているが,その事業スキームがどのようなものか,日本国内の自治体発注とどのように違うのかを示す。その上で,環境省の循環産業海外展開の戦略を踏まえて,今後循環産業がアジアでその優位性を発揮していくにはどのような戦略が必要なのかを論じ,民間の海外展開戦略を支援する都市間連携の重要性,その都市の発注事務を手伝うわが国のコンサルタントの国際化が重要あることを示す。


キーワード:循環産業,ごみ発電,プラントメーカー,PPP,都市間連携

廃棄物資源循環学会誌,Vol.26, No.6, pp.486-498, 2015
原稿受付 2015.9.30

* (一財)日本環境衛生センター 総局 企画・再エネ・国際事業部担当
** (一財)日本環境衛生センター 総局 国際事業部

連絡先:〒210-0828 神奈川県川崎市川崎区四谷上町10-6
(一財)日本環境衛生センター 総局 企画・再エネ・国際事業部担当  藤吉 秀昭

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