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No.5 廃棄物の機械的・生物的処理 (Mechanical Biological Treatment:MBT)
 

No.5 廃棄物の機械的・生物的処理 (Mechanical Biological Treatment:MBT)

平成28年9月 第27巻 第5号

目次

巻頭言

廃棄物資源循環学会と文明の未来……安田喜憲 317
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特集 廃棄物の機械的・生物的処理 (Mechanical Biological Treatment:MBT)

廃棄物処理技術としてのMBTシステムの現状と展望……石垣 智基 319
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欧州におけるMBT技術動向と事例紹介……吉川克彦・角田芳忠 325
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地域適正および持続可能な廃棄物管理とバイオドライングMBT……李 東勳・朴 在嵐 333
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熱帯気候地域におけるMBT運用の適合性評価……山田正人・落合 知・石垣智基 342
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混合廃棄物処理における機械選別について……川嵜幹生 347
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日本の廃棄物管理システムにおけるMBT適用可能性……石井一英・古市 徹 355
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廃棄物アーカイブシリーズ 『ゴミ戦争』の記録

第10回:ごみ戦争の回避――清掃事業の近代化への取り組み (川崎市の場合)――……中西正義・石渡和夫 362
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支部特集/支部だより

支部だより:東北支部「講演会」開催報告…… 365
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支部だより:関西支部「廃棄物法制度に関するセミナー及び支部総会」開催報告…… 367
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書評

安田喜憲 著:環境文明論――新たな世界史像――……吉岡敏明 370
大沼あゆみ,岸本充生 編:シリーズ環境政策の新地平6 汚染とリスクを制御する……村上進亮 371

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要旨

廃棄物処理技術としてのMBTシステムの現状と展望

石 垣 智 基*

【要 旨】 MBT技術は,混合状態の都市ごみの減量化・埋立負荷削減を目的とした中間処理方式であり,機械的選別と生物的減容化・乾燥を組み合わせたシステムの総称である。対象とする廃棄物の組成,生産される資源・エネルギーの要求品質に基づいて,機械選別と生物処理プロセスの採用技術,実施順序・回数等,多様な組み合わせが選択可能である。MBTシステムの成否は高熱量の固形物選別燃料 (SRF) の品質や市場性で評価されることが多い。しかし廃棄物管理の適正化が必要な新興国では,生産されるSRFの品質・市場性は低いものの,埋立前処理としての高い効果が注目されている。わが国では,衛生的かつ効率的な処理方式として定着している熱処理にMBTが代替することは容易ではないが,離島や山村等の小規模の単純焼却施設については比較的高い代替可能性がある。地域の気候や廃棄物管理の歴史,社会的な受容性を加味した上で,施設更新時等において廃棄物処理のオプションの一つとしてMBTが検討の俎上に載ることが望まれる。


キーワード:機械的・生物的処理 (MBT),固形物選別燃料 (SRF),埋立前処理,熱処理代替

廃棄物資源循環学会誌,Vol.27, No.5, pp.319-324, 2016
原稿受付 2016.8.19

* (国研)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 国際廃棄物管理技術研究室

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(国研)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 国際廃棄物管理技術研究室  石垣 智基

欧州におけるMBT技術動向と事例紹介

吉 川 克 彦*・角 田 芳 忠**

【要 旨】 欧州におけるMBT (Mechanical Biological Treatment) の普及には,埋立指令 (1999/31/EC),廃棄物枠組指令 (2008/98/EC),再生可能エネルギー指令 (RES指令 2009/28/EC) の法令類が大きく寄与してきた。本稿では,これらの指令 (Directive) の廃棄物管理に与える影響について説明し,加えてMBTの概要を述べた後,MBTを好気的安定化プロセス,バイオドライング (RDF製造) プロセス,嫌気性消化 (メタン発酵) プロセスの3方式に分類して整理した上で,欧州各国でのMBT普及状況について述べている。さらに,2011年2月に実施した現地調査のうち,ドイツ東部北端のロストック (Rostock) 市の施設,およびフランス南東部・バレンス (Valence) にあるSYTRAD (シトラッド) 廃棄物処理組合の施設を紹介する。


キーワード:EU埋立指令,好気的安定化,バイオドライング,嫌気性消化,SYTRAD (シトラッド)

廃棄物資源循環学会誌,Vol.27, No.5, pp.325-332, 2016
原稿受付 2016.8.1

* (株)エックス都市研究所
** (株)北海道サニタリー・メンテナンス

連絡先:〒060-0042 北海道札幌市中央区大通西5丁目11 大五ビル5F
(株)北海道サニタリー・メンテナンス  角田 芳忠

地域適正および持続可能な廃棄物管理とバイオドライングMBT

李   東 勳*・朴   在 嵐**

【要 旨】 トイレの進化と幸福感の関係のように,一国家の幸福も持続可能な廃棄物管理への進化と関連しているかもしれない。ヨーロッパでは有機性廃棄物の埋立削減および都市廃棄物のリサイクル活性化等の指令により,廃棄物の特性と管理システムが変わりつつある。ドイツでは,2012年,約10年間で都市廃棄物の約30%がMBT施設で処理されていたが,2020年には中間処理施設の総容量が180%にまで達すると予測され,焼却施設や旧型MBT施設の解体または転換が予想されている。開発途上国は勿論のこと,先進国においても3Rや分別収集だけでは資源循環および気候変動に完全に対応できない状況にあり,さらなる物質およびエネルギー回収策が必要である。新概念のMBTであるバイオドライング (Bio-drying) MBTは,物質およびエネルギー回収を最大化し,埋立依存度を最小化する可能性があり,さまざまな地域条件への対応性も高いことから,廃棄物管理の地域適正性および持続可能性といった観点から検討する。


キーワード:MBT (機械的-生物的処理),バイオドライングMBT,地域適正および持続可能な廃棄物管理

廃棄物資源循環学会誌,Vol.27, No.5, pp.333-341, 2016
原稿受付 2016.7.29

* 韓国ソウル市立大学 環境工学部
** 韓国ソウル市立大学 都市科学研究院 エコエネルギー研究センター

連絡先:02504 韓国ソウル特別市東大門区ソウル市立大学路163
韓国ソウル市立大学 環境工学部  李 東勳

熱帯気候地域におけるMBT運用の適合性評価

山 田 正 人*・落 合   知**・石 垣 智 基**

【要 旨】 途上国において導入されつつある,都市ごみ (MSW) の選別と資源化を行い,埋立ごみを削減する技術である機械的・生物的処理 (MBT) について,東南アジアで稼働する施設のうちタイの2つの施設を紹介した上で,これら施設をモデルケースとして,運用期間全体の費用便益を分析した。これらMBT施設では,都市ごみに含まれる水分を低減させるため,天日乾燥または生物発酵熱を利用したバイオドライ工程が取り入れられており,産物は工業用の燃料として利用されていた。MBT施設の20年間の運用により,RDF製造工程の費用と残渣処分の費用が小さいことが費用便益比 (CBR) に大きく影響していた。


キーワード:熱帯気候地域,都市ごみ (MSW),機械的・生物的処理 (MBT),費用便益分析

廃棄物資源循環学会誌,Vol.27, No.5, pp.342-346, 2016
原稿受付 2016.9.20

* (国研)国立環境研究所 福島支部
** (国研)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 国際廃棄物管理技術研究室

連絡先:〒963-7700 福島県田村郡三春町深作10-2
(国研)国立環境研究所 福島支部  山田 正人

混合廃棄物処理における機械選別について

川 嵜 幹 生*

【要 旨】 廃棄物処理にかかわる問題として,地球温暖化対策,労働者不足,埋立地の問題がある。そのため,排出量の削減,処理の効率化,資源化の推進に努めなければならない。選別機械は,処理の効率化および資源化の推進には必要不可欠な機器である。そこで,混合廃棄物処理にかかわりのある選別機器を紹介するとともに,それらの選別機器を使用して処理された建設系混合廃棄物および一般廃棄物不燃ごみの処理残渣を対象に,組成調査を行い,混合廃棄物処理の現状と今後のあり方について検討した。


キーワード:選別機械,処理残渣,建設系混合廃棄物,不燃ごみ

廃棄物資源循環学会誌,Vol.27, No.5, pp.347-354, 2016
原稿受付 2016.8.31

* 埼玉県環境科学国際センター

連絡先:〒347-0115 埼玉県加須市上種足914
埼玉県環境科学国際センター  川嵜 幹生

日本の廃棄物管理システムにおけるMBT適用可能性

石 井 一 英*・古 市   徹*

【要 旨】 本稿では,MBTがドイツで導入された背景や経緯に基づき,MBTの導入目的の変遷,すなわち埋立前処理から資源化が主目的に展開していく過程について述べる。その上で,日本の廃棄物管理システムにおけるMBT適用可能性について述べる。MBTは「破砕・選別・微生物処理の要素技術を目的に応じて組み合わせて行う処理プロセス」の総称であり,単なる焼却プロセスの代替ではなく,エネルギー回収を伴う焼却処理との連携を示唆するものである。今後,排出量削減と人口減による廃棄物量の減少やリサイクル促進による質の変化に直面する日本にとって,MBTが資源化・エネルギー回収という点から,広域化も含め廃棄物管理のあり方を再考する良い契機となることについて言及した。


キーワード:MBT,中小市町村,人口減社会,資源化・エネルギー回収

廃棄物資源循環学会誌,Vol.27, No.5, pp.355-361, 2016
原稿受付 2016.8.10

* 北海道大学大学院工学研究院 環境創生工学部門

連絡先:〒060-8628 北海道札幌市北区北13条西8丁目
北海道大学大学院工学研究院 環境創生工学部門 循環計画システム研究室  石井 一英

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