No.1 バイオマス利用の新潮流
平成29年1月 第28巻 第1号
目次
年頭所感
技術と廃棄物資源循環……川本克也 1
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特集 バイオマス利用の新潮流
木質バイオマス/廃プラスチック混合物の共熱分解による化学原燃料化……熊谷将吾・吉岡敏明 4
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木質系バイオマスのガス化-バイオ燃料製造……小木知子・中西正和 13
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住民と協働で進める町田市の新たな施設整備――バイオガス化施設導入の経過――……田後眞人 23
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温泉熱活用型小型メタン発酵システムを核とした資源循環とコミュニティ形成……多田千佳・鈴木崇司 30
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バイオマス系廃棄物等の流動ガス化……髙橋正光・細田博之・早川 諒 37
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バイオコークス (BIC) の基本特性と普及促進に向けて……澤井 徹 45
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多原料バイオコークス (BIC) による一般廃棄物処理施設でのCO₂排出量25%削減の長期実証……角間崎純一・橋本敬一郎・内山 武・奥山契一・堀内 聡 53
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平成28年度第27回研究発表会報告
研究発表会概要…… 63
特別プログラム報告…… 66
国際セッション報告…… 70
施設見学会報告…… 72
市民展示・市民フォーラム報告…… 75
企画セッション報告…… 78
廃棄物アーカイブシリーズ/『ゴミ戦争』の記録
第12回:大阪市におけるごみ処理対策の歴史 (後編)――ごみ埋立の歴史の概説と海面埋立処分場建設のための諸実験――……山本 攻・澤地 實 86
支部特集/支部だより
支部だより:最近の東海・北陸支部の活動状況…… 91
書評
喜多川 進 著:環境政策史論――ドイツ容器包装廃棄物政策の展開――……山川 肇 93
池 道彦,原 圭史郎 著:想創技術社会――サステイナビリティ実現に向けて――……奥田哲士 94
要旨
木質バイオマス/廃プラスチック混合物の共熱分解による化学原燃料化
熊 谷 将 吾*・吉 岡 敏 明*
【要 旨】 近年,木粉とプラスチックを複合したWood-Plastic Composites (WPC) やセルロースナノファイバー強化樹脂等,木質バイオマスやプラスチックに明確に区別できない材料の需要が伸長している。また,廃棄物処理の現場では,木くずと廃プラスチックの混合廃棄物が発生している。これら木質バイオマス/廃プラスチックの複合物および混合物を,それぞれ素材分離することは効率・経済性ともに悪く非現実的である。よって,現実的には,共処理されることが望ましい。さらに,今後のリサイクルのあり方として,リサイクルの量だけではなく「質」も重視されることを鑑みると,これら複合物および混合物から,循環資源となりうる化学原燃料を獲得するメリットは極めて大きい。本稿では,木質バイオマス/廃プラスチック混合物の共処理の可能性を示すことを目的に,まず,熱分解,燃焼,ガス化等の熱化学変換法に着目したプラスチックリサイクルの現状および木質バイオマス利用の現状について述べた。続いて,著者らが遂行している,木質バイオマス/プラスチックの共熱分解および合成ガス回収に関する研究成果を例として,これらの研究開発動向について述べた。
キーワード:木質バイオマス,廃プラスチック,共熱分解,相互作用,ガス化
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.1, pp.4-12, 2017
原稿受付 2017.2.10
* 東北大学大学院 環境科学研究科
連絡先:〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-07
東北大学大学院 環境科学研究科 吉岡 敏明
木質系バイオマスのガス化-バイオ燃料製造
小 木 知 子*・中 西 正 和*
【要 旨】 バイオマスガス化-触媒液化によるバイオ液体燃料 (Biomass-to-Liquid:BTL) は,有望なプロセスとして,わが国においても,2030年までにBTLを広く導入することが提唱されており,その早急な開発・実用化が迫られている。われわれは,噴流床型ガス化炉を用いたバイオマスガス化の研究を行っており,後段の触媒合成に適したガス化の研究開発を,企業や大学と共同でNEDO ((国研)新エネルギー産業技術開発機構) プロジェクト (2ton/d規模テストプラントによるガス化-メタノール製造,バイオジェット燃料製造等) の中で行ってきた。本稿では,これまで行ってきた噴流床ガス化炉を用いた木質系バイオマスのガス化とBTL製造について紹介する。
キーワード:バイオマスガス化,バイオ燃料,BTL,バイオジェット燃料,噴流床ガス化
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.1, pp.13-22, 2017
原稿受付 2016.12.27
* (国研)産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 創エネルギー部門
連絡先:〒305-8569 つくば市小野川16-1
(国研)産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 創エネルギー部門 小木 知子
住民と協働で進める町田市の新たな施設整備――バイオガス化施設導入の経過――
田 後 眞 人*
【要 旨】 町田市では一般廃棄物処理施設の建替事業が喫緊の課題であった。そのため,ごみ処理の将来展望を市民と協働で検討して,一般廃棄物資源化基本計画および資源循環型施設整備基本計画を策定した。新しい施設の整備および運営についてはDBO方式 (公設民営) を採用することとし,2016年1月に町田市熱回収施設等整備運営事業の実施方針を公表し,同年12月に施設整備・運営事業者と契約を締結した。一般廃棄物のごみ処理施設としては,2006年に「ごみになるものを作らない,燃やさない,埋め立てない」を市の基本理念に掲げ,再生可能エネルギー利用や環境負荷の低減に向けて市民の声に耳を傾け続けた10年あまりの道程であった。
キーワード:生ごみの資源化,一般廃棄物資源化基本計画,住民意見交換会,エネルギー利用,DBO方式
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.1, pp.23-29, 2017
原稿受付 2016.12.26
* 町田市環境資源部
連絡先:〒194-8520 町田市森野2-2-22
町田市環境資源部 田後 眞人
温泉熱活用型小型メタン発酵システムを核とした資源循環とコミュニティ形成
多 田 千 佳*・鈴 木 崇 司**
【要 旨】 温泉熱を活用した小型メタン発酵システムを使って,地域参加型の原料運搬やメタン発酵消化液の後肥利用による資源循環システムの構築を行った。メタン発酵で得られたバイオガスをコンロのエネルギー源にする,「エネカフェメタン」というカフェを併設することで,生ごみを持参するとお茶が飲める仕組みが共感を得て,すでに1,900人以上の会員が集まり,ごみの回収と液肥利用のシステムが完成した。ごみの回収・資源循環を通して人々のコミュニケーションが生まれ,幸せを感じることができるシステムにもなっており,顔が見える地域づくりの拠点や温泉エネツーリズムとして観光資源にも発展している。本論文では,このシステムについて紹介し,今後の展開について述べる。
キーワード:温泉熱,小型メタン発酵,参加型,資源循環,生ごみ
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.1, pp.30-36, 2017
原稿受付 2017.1.10
* 東北大学大学院 農学研究科 川渡フィールドセンター
** (学)静岡理工科大学 星陵中学校・高等学校
(元 東北大学大学院農学研究科)
連絡先:〒989-6711 宮城県大崎市鳴子温泉蓬田232-3
東北大学大学院農学研究科川渡フィールドセンター 多田 千佳
バイオマス系廃棄物等の流動ガス化
髙 橋 正 光*・細 田 博 之**・早 川 諒**
【要 旨】 地球温暖化防止 (温室効果ガス(GHG)削減),資源循環の観点からバイオマスの活用,エネルギーの有効利用は重要な課題である。バイオマス系廃棄物による発電は,天候等に左右されない安定的な電源として期待を集めている。地域性の高いバイオマスを用いた小型分散型の発電を普及させるには,中小規模の施設でも売電が可能な高効率発電技術が必要となる。流動ガス化技術は,施設規模に左右されないガスエンジン発電向けの気体燃料やその他の液体原燃料製造への展開が期待できる技術であり,処理対象物やガス化条件によりどのようなガスが合成できるか,その情報を蓄積することが重要である。残念ながら,まだ熱分解ガス化とガスエンジンを組み合わせた発電施設は少ないが,改質を行わずガス化したガスを完全燃焼させるガス化燃焼の一般廃棄物処理や木質バイオマス発電への採用が進んでいる。木質バイオマス発電施設では,総空気比1.2を切る低空気比での運転によりボイラ効率は90%,発電効率29%を可能とした。
キーワード:バイオマス,流動床ガス化,ガスエンジン,高効率発電,中小規模
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.1, pp.37-44, 2017
原稿受付 2016.12.27
* (株)神鋼環境ソリューション 播磨製作所
** (株)神鋼環境ソリューション 技術開発センター プロセス技術開発部
連絡先:〒675-0155 兵庫県加古郡播麿町新島19
(株)神鋼環境ソリューション 播麿製作所 髙橋 正光
バイオコークス (BIC) の基本特性と普及促進に向けて
澤 井 徹*
【要 旨】 2006年に近畿大学・井田らにより考案されたバイオコークス (BIC) について,その基本特性,製造装置,実証試験・事業のこれまでの取り組み,今後の展開等,その概要を解説した。BICは,石炭コークス代替を目的に開発されたバイオ固体燃料であり,高密度,高圧縮強度,長時間緩慢燃焼,長期安定貯蔵性,高質量収率・高エネルギー収率等の機能・特性を有する。2008年以降に実施されてきたBIC関連事業により,製造装置については,2012年にバッチ式から連続式製造方法に改良されたことで,生産性の向上,省エネルギー性が高められてきた。また,用途開発については,実機のキュポラ炉や高温ガス化直接溶融炉での石炭コークス代替の実証,農業用施設での加温の実証試験が行われ,幅広い用途での利活用実績が蓄積されてきている。今後は,BIC機能の改質により,石炭コークス代替率のさらなる向上と国内外での幅広い展開が期待される。
キーワード:バイオコークス (BIC),石炭コークス,高圧縮強度,長時間緩慢燃焼,長期安定貯蔵性
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.1, pp.45-52, 2017
原稿受付 2016.12.26
* 近畿大学理工学部機械工学科・バイオコークス研究所
連絡先:〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1
近畿大学理工学部機械工学科・バイオコークス研究所 澤井 徹
多原料バイオコークス (BIC) による一般廃棄物処理施設でのCO₂排出量25%削減の長期実証
角間崎 純 一*・橋 本 敬一郎*・内 山 武**・奥 山 契 一**・堀 内 聡**
【要 旨】 バイオコークス (以下,BIC) は,カーボンニュートラルな新燃料として期待されている。ガス化溶融炉方式一般廃棄物処理施設は,高い環境性と灰の減容化を達成できる技術として国内に普及している。本事業では,灰溶融熱源として定常的に使用される石炭コークスをBICで一部代替し,CO2排出量25%削減を実現する技術の長期実証を目的としている。また,横手市周辺地域で発生する籾殻,廃菌床およびバーク等の未利用バイオマスを用い,それらを複数混合した安価な多原料BIC製造技術開発を行う。
2015(平成27)年度は,縦型製造装置にて多原料BICの試験製造を実施し,各バイオマスの製造条件を把握した。また,横型製造設備にて多原料BICの連続製造を実施し,約40tonの多原料BICを一般廃棄物処理施設のガス化溶融炉に供給した。延べ約1カ月間の実証試験より,多原料BICの石炭コークス代替効果およびガス化溶融炉の運転に支障が出ないことを確認した。
キーワード:バイオコークス(BIC),バイオマス,石炭コークス,CO₂排出量削減,高温ガス化直接溶融炉
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.1, pp.53-62, 2017
原稿受付 2017.1.13
* (一財)石炭エネルギーセンター
** JFEエンジニアリング(株)
連絡先:〒105-0003 東京都港区西新橋3丁目2-1 Daiwa西新橋ビル3階
(一財)石炭エネルギーセンター 角間崎 純一