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No.2 PCB処理の経緯と処理完遂への展望
 

No.2 PCB処理の経緯と処理完遂への展望

平成29年3月 第28巻 第2号

目次

巻頭言

環境再生・資源循環局の新たな体制に向けて……小林正明 97
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特集 PCB処理の経緯と処理完遂への展望

PCBによる地球環境汚染と今後の課題……高橋 真・田辺信介 99
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PCB特措法の改正および今後の展望について……福井和樹 112
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JESCO事業における広域的なPCB廃棄物処理……由田秀人 120
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高濃度PCB廃棄物処理の経緯と期限内処理完了に向けて……宮金 満 127
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低濃度PCB廃棄物の無害化処理と課電自然循環洗浄……長田 容 133
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PCBの環境挙動と処理効果に関する一考察……平井康宏・酒井伸一 143
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廃棄物アーカイブシリーズ/『ゴミ戦争』の記録

第13回:準好気性埋立 (福岡方式) 開発秘話……松藤康司 149

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平成28年度廃棄物資源循環学会第2回企画セミナー報告

廃棄物の機械的・生物的処理 (Mechanical Biological Treatment:MBT)……黄 仁姫 154

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支部特集/支部だより

支部だより:関西支部「大学生・大学院生のための施設見学会」開催報告…… 156
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支部特集:東北支部「研究発表会」開催報告…… 158
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書評

山口明日香 著:森林資源の環境経済史――近代日本の産業化と木材――……酒井伸一 160
西山 孝 著:資源論 メタル・石油埋蔵量の成長と枯渇……宮脇健太郎 161

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要旨

PCBによる地球環境汚染と今後の課題

高 橋   真*・田 辺 信 介**

【要 旨】 日本等の先進諸国では,1970年代にPCBの生産と新たな使用を禁止したが,広域汚染やゆくえの解明,廃棄物処理対策等に関しては,現在も多くの課題が残されている。先進諸国における規制の強化と途上国や新興国における産業活動の拡大により,PCBや類縁POPs (残留性有機汚染物質) の発生源と汚染分布は大きく変化している。熱帯・亜熱帯地域における環境負荷の増大は,地球規模でのPOPs汚染を拡大することから,問題解決に向けた国際的な支援と連携が必要である。また,大気・海洋循環を介した長距離輸送によって,その汚染は外洋域等の遠隔地まで拡大し,とくに極域や深海環境はPCB・POPsの「たまり場」として機能することが示唆されている。生態系においては,野生の高等動物,とくに海棲哺乳類においてPCB汚染は顕在化しており,内分泌系や免疫系への影響がうかがわれる事例も多い。汚染の動向を継続的に監視するとともに,国際的な化学物質管理の適正化に向けた関係機関の協力体制強化が今後の課題であろう。


キーワード:PCB,POPs (残留性有機汚染物質),長距離輸送,遠隔地,途上国・新興国

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.2, pp.99-111, 2017
原稿受付 2017.3.12

* 愛媛大学大学院農学研究科 附属環境先端技術センター
** 愛媛大学 沿岸環境科学研究センター

連絡先:〒790-8566 松山市樽味3丁目5-7
愛媛大学大学院農学研究科 附属先端環境技術センター  高橋 真

PCB特措法の改正および今後の展望について

福 井 和 樹*

【要 旨】 高濃度PCB廃棄物は,全国5カ所のJESCOの処理施設で処理が進められているが,定められた期限を遵守して,一日も早く高濃度PCB廃棄物の処理を完了させるため,2016(平成28)年にPCB特措法を改正して,制度的な措置が講じられた。これは主な措置として,政府一丸となって取り組むため,従来環境大臣が定めることとしていた基本計画を閣議決定により定めるものとすること,使用中も含めて高濃度PCBの計画的処理完了期限より前の廃棄・処分の義務づけ,都道府県等による報告徴収や立入検査の権限強化,高濃度PCB廃棄物の処分義務を負う事業者が不明等の場合の都道府県等による代執行を柱とする改正である。今後は,都道府県市および電気関係事業者等とともに,使用中のものを含むすべての廃棄物を把握するための掘り起こし調査等,足下の取り組みを確実に進めていく必要がある。また,適時的確な進捗管理を行い,必要に応じて迅速な対策を講じることが必要となる。


キーワード:ポリ塩化ビフェニル,ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法 (PCB特措法),電気事業法,残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約,中間貯蔵・環境安全事業(株) (JESCO)

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.2, pp.112-119, 2017
原稿受付 2017.2.24

* 環境省大臣官房 廃棄物・リサイクル対策部 産業廃棄物課

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2
環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課  福井 和樹

JESCO事業における広域的なPCB廃棄物処理

由 田 秀 人*

【要 旨】 中間貯蔵・環境安全事業(株) (JESCO) は,国の全額出資により設立された特殊会社であり,地元自治体の理解のもとに設置が成功した福岡県北九州市,愛知県豊田市,東京都,大阪府大阪市および北海道室蘭市の全国5カ所の拠点的広域処理施設において,世界でも類をみない化学処理による無害化処理によって高濃度PCB廃棄物の処理を進めている。2016(平成28)年のPCB特措法の改正により,わが国の期限内処理に向けた体制が整備されたところであり,JESCOでは,環境安全対策の取組強化,総ざらいへの対応,PCB廃棄物の長期的な処理見通しの作成,PCB廃棄物処理施設の解体撤去等の諸課題への対応を行いつつ,安全・確実な操業を大前提に,一日も早い高濃度PCB廃棄物の処理の完了を進めていく。


キーワード:中間貯蔵・環境安全事業(株) (JESCO),高濃度PCB廃棄物,拠点的広域処理施設,化学処理

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.2, pp.120-126, 2017
原稿受付 2017.2.14

* 中間貯蔵・環境安全事業(株)

連絡先:〒105-0014 東京都港区芝一丁目7番17号 住友不動産芝ビル3号館4F
中間貯蔵・環境安全事業(株)  由田 秀人

高濃度PCB廃棄物処理の経緯と期限内処理完了に向けて

宮 金   満*

【要 旨】 全国初の高濃度PCB廃棄物の処理施設が北九州市民の理解と協力のもと,北九州市に立地し,2004年12月から処理が進められてきた。本市は,市内の高濃度PCB廃棄物の処理の完了に向けて,掘り起こし調査を全国に先駆けて行ってきた。この調査では,調査対象事業者を自家用電気工作物の届出事業者のみとするのではなく,市内のほぼ全事業者とした。アンケート調査表の未回答事業者に対しての再アンケートの実施,電話調査,事業所立入といったフォローアップも行った。調査において処理対象物を見逃しやすい場所等の情報を事業者へ提供することも重要であった。このような取り組みを2008年度から2012年度にかけて計4回,延べ約50,000事業者に対して実施した結果,本市における処理対象物の把握はおおむね完了することができた。


キーワード:PCB廃棄物,北九州市,処理期限,掘り起こし調査,水平展開

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.2, pp.127-132, 2017
原稿受付 2017.2.8

* 北九州市 環境局 環境監視部

連絡先:〒806-8501 北九州市小倉北区城内1番1号
北九州市 環境局 環境監視部  宮金 満

低濃度PCB廃棄物の無害化処理と課電自然循環洗浄

長 田   容*

【要 旨】 低濃度PCB廃棄物とは,PCB濃度が0.5mg/kgを超える絶縁油を含む微量PCB汚染廃電気機器等およびPCB濃度が5,000mg/kg以下のPCB汚染物等をいう。その量は,変圧器やコンデンサー等が約120万台,OFケーブルが約1,400kmに上ると推算されている。
これらの廃棄物の処理には,存在量が膨大でPCB濃度が低いといった特性を踏まえ,2009年に廃棄物処理法の無害化処理認定制度が適用され,現在,同制度で認定を受けた事業者と許可事業者により焼却処理または洗浄処理が進められている。一方,使用中の微量PCB汚染絶縁油を含む変圧器の処理には,汚染絶縁油を新油に入れ替えた後に通常の使用条件で一定期間使用し続けることで浄化する課電自然循環洗浄法が適用可能となっている。
低濃度PCB廃棄物の処理期限である2027年3月31日まであと10年ではあるが,それまでに着実に処理を進めていくためにも,早急に汚染の有無確認を促す施策に加え,さらに処理体制の充実・多様化を図っていくことが求められる。


キーワード:低濃度PCB廃棄物,微量PCB汚染廃電気機器等,無害化処理認定制度,課電自然循環洗浄

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.2, pp.133-142, 2017
原稿受付 2017.2.15

* (公財)産業廃棄物処理事業振興財団

連絡先:〒101-0044 東京都千代田区鍛冶町2-6-1 堀内ビルディング3F
(公財)産業廃棄物処理事業振興財団  長田 容

PCBの環境挙動と処理効果に関する一考察

平 井 康 宏*・酒 井 伸 一*

【要 旨】 PCB廃棄物 (電気機器) からのPCB揮発量を,PCB保管庫10カ所での実測調査により推定した。他の発生源 (熱工程の非意図生成) とあわせて大気中PCB濃度を予測し,実測値との比較により,PCB発生源およびPCB処理効果について考察した。PCBの揮発係数は気温が高いほど高く,保管事業場での保管状況による影響を受けていた。PCB廃棄物からの揮発量は2003年度から2013年度にかけて約半減しており,PCB処理による保管ストック量減少に加え,PCB特措法の施行による保管状況の改善の効果があったと推定された。熱工程の非意図的生成は同期間ほぼ横ばいで推移しており,1塩素化PCBでは主要な発生源であるが,総PCBではPCB廃棄物からの揮発の方が大きかった。2塩素化物や5塩素化物以上については,顔料不純物やシーラント中PCB等の他の発生源の影響が示唆された。


キーワード:PCB廃棄物処理,揮発,排出インベントリ,大気中濃度

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.2, pp.143-148, 2017
原稿受付 2017.3.15

* 京都大学 環境安全保健機構附属環境科学センター

連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学 環境安全保健機構附属環境科学センター  平井 康宏

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