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No.6 持続可能な廃棄物最終処分場のあり方―埋立研究部会特集―
 

No.6 持続可能な廃棄物最終処分場のあり方―埋立研究部会特集―

平成21年11月 第20巻 第6号

目次

巻頭言

廃棄物資源循環学会 その使命と実践……西垣 正秀 269

特集 : 持続可能な廃棄物最終処分場のあり方―埋立研究部会特集―

安全で,安心な埋立地を目指して……松藤 康司 271
持続可能な廃棄物最終処分場のあり方――総論――……松藤 敏彦・吉田 英樹 272
廃棄物処分場における元素の消長と最終安定化に至る物質挙動解明の必要性……東條 安匡 278
埋立地ガスと温度――埋め立てが終了した処分場での調査事例を通して――……吉田 英樹 283
有害物質・溶出――環告13号溶出試験の役割と課題――……肴倉 宏史・宮脇健太郎 287
埋立物制御技術としての中間処理……山田 正人 292
循環型社会と低炭素型社会を両立させる廃棄物処理技術――都市ごみの焼却処理と焼却残渣の再資源化――……島岡 隆行・中山 裕文 297
廃棄物不適正処分現場における環境修復技術……渡辺 洋一 304
準好気性埋立構造 (福岡方式) 海外へ――国際的な可能性――……立藤 綾子・平田 修 308

書評

(独)国立環境研究所地球環境研究センター 編著:ココが知りたい地球温暖化……谷川 昇 314
寺島実郎,飯田哲也,NHK取材班 著:グリーン・ニューディール――環境投資は世界経済を救えるか――……近藤 康之 314
弘前大学農学生命科学部附属未利用バイオマス研究センター 編著:未利用バイオマスとしてのりんご剪定枝の活用戦略……毛利 紫乃 315

要旨

持続可能な廃棄物最終処分場のあり方

――総論――
松藤 敏彦*・吉田 英樹**

【要旨】 本稿は,持続可能な廃棄物最終処分場をめぐる,埋立処分部会の検討を総論としてまとめたものである。まず,持続可能な廃棄物処理とはどのようなものになるか,その中で最終処分場の持続可能性の概念を提案した。そして,どのような埋立処分を目指すべきか,安全性の考え方,跡地利用の必要性を述べ,埋立物・方法・施設構造・立地の4つの視点を含めた設計概念を提案した。さらに,安定化レベルの定義と設計管理の関係,リスク最小化の方法について述べた。次に,本特集で紹介されている様々な取り組みを,その背景と必要性とともに要約した。

キーワード:廃棄物処分場,持続可能性,設計管理,取り組み
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.6, pp.272-277, 2009
原稿受付 2009.11.30
* 北海道大学工学研究科
** 室蘭工業大学大学院工学研究科
連絡先:〒060-8628 札幌市北区北13条西8丁目
北海道大学工学研究科  松藤 敏彦

廃棄物処分場における元素の消長と最終安定化に至る物質挙動解明の必要性

東條 安匡*

【要旨】 埋立地に投入された廃棄物中の元素は,最終的に埋立ガス,浸出水,埋立層内のいずれかに分配されることになる。既往の研究によると,20年程度の期間では層内に残存する率が圧倒的に多く,1000年程度の予測でも消失してゆく傾向は緩慢であることが示されている。このことはたとえ放出が管理不要なレベル以下に収まっても,内部には多くの元素が残存し続けることを含意する。最終的な安定化に至る長い過程で,こうした層内残存物が何も問題を引き起こさないことを証明することが,埋立地の本質的な安全を保障するために必要であろう。これまで埋立地内の物質挙動予測を目的に作成されてきたモデルは,多くが反応の活発な時期での分解やガス生成を対象とするものである。長期の予測,特に有害物の挙動予測においては,主要な層内残存成分である分子量の大きい有機物の生成や腐植の生成を如何にして再現するかが課題となる。

キーワード:廃棄物処分場,消長,安定化,数理モデル,有機物分解
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.6, pp.278-282, 2009
原稿受付 2009.10.13
* 北海道大学大学院工学研究科 環境循環システム専攻 廃棄物処理工学研究室
連絡先:〒060-8628 札幌市北区北13条西8丁目

埋立地ガスと温度――埋め立てが終了した処分場での調査事例を通して――

吉田 英樹*

【要旨】 埋立地において,埋立地ガスの組成と温度は,内部での好気性・嫌気性微生物反応を反映する指標であり,安定化インデックスとして重要である。埋め立てが終了した処分場で,打ち込み型ガス抜き管を設置した後の埋立ガス組成と温度の測定事例について紹介した。一部のガス抜き管で好気性微生物反応の活発化による炭酸ガスの増加・温度上昇が起こっていることや,全体として嫌気性微生物反応が支配的であることを示すとともに,打ち込み型のガス抜き管では安定化促進の効果が限定的であることを示した。現在,多くの研究者によって行われている化学的・生物学的好気性反応導入による安定化促進事例についても紹介した。最後に温度の鉛直方向の分布や時間的変化を示し,安定化のインデックスとしての温度の重要性について示した。

キーワード:廃棄物処分場,埋立ガス,温度,好気性微生物反応,安定化
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.6, pp.283-286, 2009
原稿受付 2009.11.27
* 室蘭工業大学大学院工学研究科
連絡先:〒050-8585 北海道室蘭市水元町27-1

有害物質・溶出――環告13号溶出試験の役割と課題――

肴倉 宏史*・宮脇 健太郎**

【要旨】 廃棄物最終処分場は,周辺環境に甚大な影響を及ぼさぬよう,十分な管理が行われねばならない。埋立廃棄物の性状については,有害物質の溶出性の観点から個々の廃棄物の最終処分の可否を判定するために,昭和48(1973)年環境庁告示第13号「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」(環告13号) が用いられている。本稿は環告13号の役割と課題について,最近の知見や情報を踏まえながらまとめたものである。廃棄物埋立地の環境安全性を担保するために,溶出試験による廃棄物の検査はこれからも必須であるが,循環型社会構築を目指し廃棄物有効利用を積極的に図る最近の動勢から,土壌や循環資源との境界とその往来があり得ることを意識した共通の考え方を構築しなければならない。

キーワード:溶出試験,産業廃棄物,特別管理廃棄物,金属,長期安全性
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.6, pp.287-291, 2009
原稿受付 2009.10.13
* (独)国立環境研究所\ 循環型社会・廃棄物研究センター
** 明星大学理工学部環境システム学科
連絡先:〒305-8506 つくば市小野川16-2
(独)国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター 肴倉 宏史

埋立物制御技術としての中間処理

山田 正人*

【要旨】 日本と世界の都市ごみと建設廃棄物に対する埋立物の質制御技術について概観した。都市ごみからの有機物低減技術として,日本の焼却技術に対して,欧州では機械選別と生物処理を組み合わせたMBT(Mechanical Biological Treatment)の導入が進められている。また,アジアの都市ごみ処理における中間処理では,焼却主体と焼却・生物処理併用の2つの流れがある。建設混合廃棄物の破砕選別処理は,埋立物から有機物を取り除くだけではなく,再生利用される資源を分離している。ふるい選別残さの質制御が技術的課題であり,技術がもたらす費用対効果を考慮する必要がある。地域の事情にあわせた可変性と経済性を高めることが,日本の中間処理技術の普遍化に必要である。

キーワード:埋立物,中間処理,有機物,建設廃棄物
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.6, pp.292-296, 2009
原稿受付 2009.11.11
(独)国立環境研究所\ 循環型社会・廃棄物研究センター
連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2

循環型社会と低炭素型社会を両立させる廃棄物処理技術

――都市ごみの焼却処理と焼却残渣の再資源化――
島岡 隆行*・中山 裕文*

【要旨】 人間活動の代謝産物として発生する一般廃棄物の処理責務が課せられている市町村においても,低炭素型,循環型の処理システムの構築が求められている。本研究では,現在のわが国における一般廃棄物処理の現状を俯瞰し,その課題を抽出するとともに,新たな技術としてRecyclable Landfill System (以下,RLシステム) を提案した。RLシステムとは,廃棄物埋立地の埋立空間を焼却残渣セメント原料化のための脱塩施設として繰り返し利用することが可能な持続型環境技術 (Sustainable Environmental Technology) を取り入れたシステムであり,循環型社会のみならず,低炭素型社会にも貢献する技術である。

キーワード:低炭素社会,循環型社会,焼却残渣,セメント原料化,資源化
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.6, pp.297-303, 2009
原稿受付 2009.11.19
* 九州大学大学院工学研究院環境都市部門
連絡先:〒819-0395 福岡市西区元岡744番地
九州大学大学院工学研究院環境都市部門 島岡 隆行

廃棄物不適正処分現場における環境修復技術

渡辺 洋一*

【要旨】 廃棄物の不適正な埋設あるいは堆積によって周辺環境に支障を生じる危険性の高い事例について,その危険性の修復方法を実例を交えて解説した。周辺環境に支障を生じる危険性の高い事例として,廃棄物の崩落,硫化水素ガス・メタンガスの発生,有害金属化合物含有廃棄物の埋設について取り上げた。これらの事例について,①調査,②対策立案,③作業時の安全対策および環境保全対策,④事後モニタリングと環境保全対策の概要について述べた。対策に有効な手法として廃棄物層内部の硫化水素ガス発生抑制対策,有害金属含有廃棄物埋設による汚染範囲の決定手法などを紹介した。

キーワード:廃棄物不適正処分,硫化水素ガス,メタンガス,有害金属汚染
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.6, pp.304-307, 2009
原稿受付 2009.10.15
* 埼玉県環境科学国際センター
連絡先:〒347-0115 埼玉県北埼玉郡騎西町上種足914

準好気性埋立構造 (福岡方式) 海外へ

――国際的な可能性――
立藤 綾子*・平田 修**

【要旨】 日本では一般廃棄物の最終処分場の多くにおいて準好気性埋立構造が採用され,焼却や破砕選別処理などの中間処理の発展によって,最終処分場の不要論が飛び交う昨今でも従前として最終処分場の主要な構造となっている。これは,本構造が浸出水の汚濁負荷の削減や廃棄物層の早期安定化等の最終処分場の維持管理の主目的である環境リスクの低減において,嫌気性構造よりも優位であるばかりでなく,建設および維持管理が比較的簡便であるためと考えられる。海外における本構造の適用は実施国に決定権があるため,実施国の政策決定者に浸出水浄化機能やメタン削減効果などの環境リスクの低減効果を理解してもらうことも重要であり,これまで本構造を採用した国々における水質およびガス質などの科学的データの蓄積を,実施国の研究機関と連携して行う必要がある。近い将来,準好気性埋立構造がコベネフィット (Co-benefit) CDM技術の一つとして国際的に評価されるための方向性と課題について報告する。

キーワード:準好気性構造,福岡方式,技術移転,コベネフィット (Co-benefit) CDM
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.6, pp.308-313, 2009
原稿受付 2009.11.11
* 福岡大学大学院工学研究科
** 福岡大学環境保全センター
連絡先:〒814-0133 福岡市城南区七隈8-19-1
福岡大学 立藤 綾子

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