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No.4 小型家電と金属資源リサイクル
 

No.4 小型家電と金属資源リサイクル

平成24年7月  第23巻 第4号 

目次

巻頭言

現状を認識する力:五感……田中綾子 259

特集 小型家電と金属資源リサイクル

使用済小型電子機器等リサイクル制度の概要と今後の取り組みに関する考察……森下 哲 260
小形電池の金属量推定とその廃棄行動に関する研究……浅利美鈴・酒井伸一 268
使用済家電製品の国内フローに関する考察と中古品輸出量の推定……寺園 淳・吉田 綾 280
欧州における使用済小型家電の回収・リサイクルをめぐる動向……東條なお子 295
小型家電のフローと回収・収集・運搬……村上進亮 303
中間処理とレアメタルリサイクル技術の展開……大木達也 311
小型家電リサイクル法の意義と法的課題……大塚 直 319

平成24年度廃棄物資源循環学会研究討論会報告

総括報告…… 327
自転車の街づくりと循環型社会……山川 肇 328
地震列島日本の「災害廃棄物処理計画」――過去から未来へ伝えるべきこと(2) 事前編――……臼井直人 329
小型家電と金属資源……平井康宏 330
リサイクルの可能性を高めた新材料開発……杉山 智 331

会議報告

2012春季・韓国廃棄物資源循環学会参加報告…… 332

書評

井熊 均 著:次世代エネルギーの最終戦略――使う側から変える未来――……田頭成能 334
森田昌敏 責任編集:福島原発事故の検証と環境放射能汚染『資源環境対策別冊』(Vol.47 No.10)……高岡昌輝 335

要旨

使用済小型電子機器等リサイクル制度の概要と今後の取り組みに関する考察

森 下  哲*

【要 旨】 2012(平成24)年1月の中央環境審議会答申を踏まえ,“使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律”が,同年3月9日に閣議決定,同日付で国会に提出され,8月3日に成立した。本法に盛り込まれた使用済小型電子機器リサイクル制度は,“誰かに義務をかけるのではなく,関係者が協力して自発的に回収方法やリサイクル実施方法を工夫しながら,それぞれの実情に合わせた形でリサイクルを実施する促進型の制度を目指すべきであり,できるところ (品目・鉱種・地域) からリサイクルの取り組みを開始し,回収率を増やしながら徐々に品目・鉱種・地域を拡大させることが望ましい。”との答申の基本的な考え方を踏まえて制度設計されている。本稿では,同制度の概要を紹介するとともに,その円滑な履行を確保し,循環型社会の形成を進めるために今後強化が必要とされる取り組みについて考察する。


キーワード:使用済製品,小型電子機器,再資源化,リサイクル,有用金属

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.4, pp.260-267, 2012
原稿受付 2012.6.15  最終受付 2012.8.28

* 環境省 前大臣官房廃棄物・リサイクル対策部リサイクル推進室

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2
環境省 前大臣官房廃棄物・リサイクル対策部リサイクル推進室   森下哲

小形電池の金属量推定とその廃棄行動に関する研究

浅 利 美 鈴*・酒 井 伸 一*

【要 旨】 小形電池に着目し,その化学性状および使用・廃棄実態,小型家電製品からの取り外しの実態を把握し,回収・リサイクル検討に向けた基礎的知見を得ることを目的とした。そのために,小形電池の化学性状把握を試みると同時に,小型家電製品中の電池保有や廃棄時の電池取り外しに関する消費者アンケートを行い,これらの結果より,国内における小形電池に含まれる金属量を推定した。
 その結果,小形電池にはレアメタルを含むさまざまな物質が含まれることが確認された。また,消費者アンケート調査の結果,小型家電製品および小形電池の保有状況および個数が明らかになったと同時に,廃棄時,7割以上は小形電池を取り外していないこと,小形二次電池の回収・リサイクルに関する法律やシステムの認知度は3~4割であることなどが明らかになった。また,家庭で保有されている小形電池に含まれる金属量を推定すると,たとえばLiは516ton,Coは3,900ton,Niは4,700ton,Cdは1,600tonとなり,Li, Co, Niは年間国内需要量の1~4割,Cdも同程度にあたり,回収・リサイクルの意義が確認された。


キーワード:小形電池,小型家電製品,回収,レアメタル,アンケート

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.4, pp.268-279, 2012
原稿受付 2012.4.24
査読付展望論文
原稿受付 2011.6.11  原稿受理 2011.7.24

* 京都大学環境科学センター

連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学環境安全保健機構附属環境科学センター  浅利美鈴

使用済家電製品の国内フローに関する考察と中古品輸出量の推定

寺 園   淳*・吉 田   綾*

【要 旨】 使用済家電の国内フローや中古品輸出量の現状と課題を明らかにするために,家電4品目に加えて携帯電話などの小型家電を取り上げて,国内フローの検討状況を考察し,中古品輸出の推定方法の検討と結果を議論した。家電4品目の国内フローは,買替促進策の影響を考慮した排出台数の推定が課題であり,消費者や小売業者からの引渡し先などについて,再検討を行うのが望ましい。また,中古品輸出量の推定のために,貿易統計やマスバランス (国内フロー) を利用した方法などをレビューした。中古品輸出量の把握のためには,貿易統計は品目によって限界があることを考慮し,できるだけ国内フローによる推定も行って補足するのが望ましい。2011年の中古のブラウン管 (CRT) テレビの主たる仕向け先はベトナム,フィリピン,マカオであり,携帯電話の場合は香港,アフガニスタンであった。資源保全と不適正輸出防止の観点から,今後も輸出動向には注意する必要がある。


キーワード:家電4品目,小型家電,CRTテレビ,国内フロー,中古品輸出

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.4, pp.280-294, 2012
査読付展望論文
原稿受付 2012.6.19 原稿受理 2012.8.23

* (独)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(独)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター  寺園淳

欧州における使用済小型家電の回収・リサイクルをめぐる動向

東 條 なお子*

【要 旨】 2003年初頭に発効したEU廃電機・電子機器指令 (WEEE指令) に基づくEU加盟各国の国内法にのっとって進められてきた,欧州の小型家電の回収・リサイクルは,ハイテク産業維持のために必要不可欠な諸資源の供給源としての可能性が認識されるにつれ,2000年代後半以来,環境政策・産業政策双方の枠組みの中で重要視されるようになった。諸資源確保の重要性は,2012年6月に可決された改正WEEE指令に先立つ検討過程においても認識され,現行WEEEの実施の中でうまくいっていない回収率の向上をはかって新たに付け加えられた諸規定をはじめ,さまざまな改正点に反映されている。本稿では,欧州におけるリサイクルと資源確保をめぐる諸政策の動向を概観するとともに,リサイクル・資源回収に先立つ第一歩である回収を中心に,現行WEEE指令の実施状況,指令改正過程における諸論点および加盟各国独自の取り組みを紹介する。


キーワード:使用済小型電機・電子機器,拡大生産者責任,WEEE指令,回収,資源確保

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.4, pp.295-302, 2012
原稿受付 2012.7.4

* ルンド大学国際環境産業経済研究所

連絡先:International Institute for Industrial Environmental
Economics at Lund University P.O. Box 196 Tegn\u000000e9rsplatsen
4 SE-221 00 Lund, Sweden   Naoko Tojo

小型家電のフローと回収・収集・運搬

村 上 進 亮*

【要 旨】 本稿では,使用済小型家電製品のフローを概観し,現状の問題点を明らかにした上で,その解決法について回収・収集・運搬の側面から検討を行った。現状のフローを見たとき,大きな問題点は3つある。それは,退蔵へ向かう量,リサイクルされずに最終処分される量,そして海外向けの見えないフローの3つのフローが大きいことである。これに対応するべく,効率的なリサイクルシステムを構築しなければならないが,そのフローの初期段階を担う回収・収集・運搬の効率化は必要不可欠である。しかしながら,地域によって効率的な収集システムのあり方が異なることは,そのシミュレーションを通して明らかである。また対象となりうる製品の変化も非常に早い。よって,すべての関係者の協力の下,品目の指定から,こうした物流システムを含め,さまざまな変化に柔軟に対応可能な効率的なシステムの構築が望まれることが明らかになった。


キーワード:小型家電,フロー,収集・運搬,シミュレーション

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.4, pp.303-310, 2012
原稿受付 2012.7.2  最終受付 2012.8.20

* 東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻

連絡先:〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻  村上進亮

中間処理とレアメタルリサイクル技術の展開

大 木 達 也*

【要 旨】 わが国のレアメタルリサイクルを促進するため,中間処理技術の役割と課題について展望した。レアメタルをリサイクルするには,物理選別による中間処理を製錬工程前に施し,銅や貴金属と分離しつつ,レアメタル元素を1次濃縮することが不可欠である。中間処理工程は,廃製品を解体,粉砕,選別するプロセスからなるが,レアメタルは製品中に局所的に使用されているため,現状ではわが国でも手作業が多用されている。その機械化,自動化を進め経済的なリサイクルを実現するため,粗粒段階での単体分離達成という基本概念をより厳格に実施することが必要となる。また,本報では,タンタルコンデンサ,ネオジム磁石,希土類蛍光体を例にとり,製品個別に克服すべき課題についても紹介した。これらわが国の資源循環に関する課題は,最終的には中間処理技術だけの問題ではなく,製品設計から,回収,再資源化に至る一連のシステムの中で最適化することが必要である。


キーワード:リサイクル,レアメタル,中間処理,物理選別,都市鉱山
廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.4, pp.311-318, 2012
原稿受付 2012.6.18

* (独)産業技術総合研究所

連絡先:〒305-8569 茨城県つくば市小野川16-1
(独)産業技術総合研究所   大木達也

小型家電リサイクル法の意義と法的課題

大 塚   直*

【要 旨】 小型家電リサイクル法に基づく制度の意義は,第1に,環境制約・環境負荷の低減のみでなく,資源の有効利用・確保を目的とするものであり,従来の循環に関わる法体系の中で新たな目的を追加したことにある。第2に,本制度は自主性を尊重した促進法を目指していることである。第2点から,本法案に基づく制度が成功するかは市町村,認定事業者,小売業者がどう活動するかにかかってくる。そのため,①認定事業者が採算がとれなくなることや市町村に過度の負担となることができるだけないよう,②仮に市況の変化によって認定事業者の採算がとれなくなった場合にも一定期間は制度を継続できるようにする必要がある。また,第2点のように,促進型の制度であっても特定の者に費用負担義務を課する場合と同程度の効果が得られるのか,仮に効果が得られにくかったとした場合その程度の効果で十分といえるかは,5年後の見直しの時期に判断されるべきであろう。


キーワード:小型家電,リサイクル,資源確保,レアメタル,再資源化事業計画

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.4, pp.319-326, 2012
原稿受付 2012.6.19  最終受付 2012.8.24

* 早稲田大学大学院法務研究科

連絡先:〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1
早稲田大学大学院法務研究科   大塚直

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