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2007小集会開催要旨

2007小集会開催要旨

部会長挨拶(部会メンバー 松藤部会長)

・ これまでプラスチックを対象に研究実施。その成果を本として出版する予定
・ 今年度は新しい対象としてレアメタルに着目

ワーキング活動報告(部会メンバー 遠藤)

・ WG活動の報告
・ WG1「レアメタルと資源・環境対策」及びWG2「レアメタルのリサイクル技術」の発表
・ 一次資源側と廃棄物側をどうつなげていくかが重要

特別講演

1. インジウム資源の有効利用(三井金属 高橋氏)

・ ここ3年でインジウムリサイクルがかなり進展。最近は供給過剰状態
・ 2003年起点に思惑的な要因で100ドル/kgから1,000ドル/kgに急上昇。足元では650ドル/kg
・ 8割はリサイクルインジウム。残りは亜鉛製錬の副産物としてバージン材投入。亜鉛製錬からのインジウムは350ドル/kg以上であると製錬メーカーはペイするため、まだ下落する余地あり
・ ITOターゲットは1,000t/yのインジウム需要があり、テレビ(製品)に行くのは45kgに過ぎずクローズドリサイクルで744kgはまかなえるため162t/yを系外の亜鉛製錬から新規投入すればよい。それに対し、製錬会社は500t/y程度生産しており供給過剰
・ 4年前のインジウムクライシスは、その当時の価格が100ドル/kgだったためにコスト上の問題でリサイクルされていないケースが多く、急激な価格上昇にリサイクルシステム構築が追いつかなかったため
・ 亜鉛は鉄の防錆用途が7割を占め、経済成長率に相関している。このため、亜鉛製錬が急激に低下することはなく、亜鉛鉱石からのインジウム回収は余裕があり、将来的に見てもクライシスは想定できないというのが予想。亜鉛鉱石中のインジウム1200t、うち350ドルでペイするとして600t、実際の生産は500tでまだ余裕有り。

→フロアからの質問 ITOターゲットの大半が返ってくるフローになっているのがよくわからない
・ ITOのセラミックス板を銅板に貼り付けた状態で納品する。利用企業はスパッタという方式でITOを飛ばしてガラスに蒸着させて利用するが、30%くらいを使った状態で使えなくなり、残り70%を使用済み品としてターゲットメーカーに返す(=リサイクル)というフローである

2. インジウムの回収技術(シャープ 辻口氏)

・ 05年に液晶テレビがブラウン管テレビの出荷量を抜いている。世界全体で見ても2011年まで液晶テレビは年率30%で上昇する想定
・ 透明電球材料の性能比較をするとITO、ZnO、SnO2とある中でITOが最も優れており、現在はITOのみが使用されている
・ 液晶テレビからの廃ガラス排出量は2015年に970t、インジウム含有量0.2-0.7t。それが2020年には液晶ガラス4130t、インジウム含有量0.8-3.1tと予測
・ インジウム資源が枯渇する中で、対策としてはインジウム資源確保・増産、インジウム使用量低減が考えられる。また当面はインジウムリサイクルが求められている
・ 使用する全体の3-4割が今後のリサイクル対象となる。既にターゲット未使用分は納品メーカーに返却している。また装置壁付着分は2005年4月より回収を開始。現状ではエッチング廃液分と液晶パネル搭載分が未回収のままとなっている
・ イオン交換樹脂を用いた液晶パネルからのインジウム回収技術を開発。回収率は90.1%で、回収インジウムスラッジの純度は94%
・ 家電リサイクルプラントでのリサイクルを見据えて、大気圧プラズマ照射によるインジウム回収技術を開発。湿式プロセスはプロセスの多段化と廃液の発生があるため、よりシンプルなプロセスを検討。30秒のプラズマ照射で79%の回収率
・ パネル中のインジウムは含有量が非常に希薄であり、技術的に可能だが経済性に問題。廃棄パネルのリサイクルを考慮した場合、パネルガラスを付加価値の高い用途に転用できることが重要となる

パネリストによる発表

1. 人口鉱山構想・リサイクル実証試験(東北大学 中村先生)

・ 家電メーカーに聞いても製品中の金属含有量データはないといわれる。廃棄される金属量の予想をした結果、銅11万t、鉛1万t、錫5300t、貴金属類も数10t以上がポテンシャルとして腑存していると推計
・ たぬき掘りから鉱床化:グッズとバッズをきちんと選別して保管する。銅、鉛、亜鉛、PGMsは製錬で回収し、基盤等(レアメタル部分)をストック
・ 小型家電の殆どが一般廃棄物とされ、保管することが想定されておらず、社会実験の実現には多くの自治体等への折衝に労力を費やした。
・ 大館市で小型家電回収実験を周知するポスターを全戸配布。スーパーに回収ボックスを設置。3ヶ月で7t弱回収し、そのうち6tを不燃ごみから回収、回収ボックスからは1t弱。しかし回収ボックスからの方が回収個数は多い。ポテンシャルの20%程度が集まった勘定
・ 大したトラブルもなく非常にスムーズに収集実験ができた。大館市という小規模な条件だったからうまくいったという声もある。今年度は拡大実施を予定しており、秋田県北部エコタウンに範囲拡大。また秋田県以外地区へも拡大
・ コンセンサス会議として地域住民とのコミュニケーションを実施。どういう回収システムだと住民が協力できるかを模索。

 

2.レアメタルの国際循環とその課題(リサイクルワン 本田氏)

・ 東南アジアに進出している日系半導体メーカーの貴金属スクラップが中国に流れている状況。マレーシア-アメリカのように協定国間の流れも。
・ 半導体工場800社にアンケートをしてみると、情報不足4割、適正な事業者が少ない3割等の課題が浮上。バーゼル手続きをしている件数は少なく、公開情報がない。
・ 貴金属スクラップの市場は2,757億円あると推定(台湾除く)。日本に持ち込んでくるビジネスの可能性
・ 東南アジアには一次製錬施設がないため、中国や欧米に輸出。中国ではプリント基板の野焼き処理が横行
・ シンガポールからの輸入実証事業を実施。通しで6ヶ月間かかった。バーゼル手続が短縮することで、倉庫の保管コスト圧縮が図れ、5万円/tから2万円/tにコスト低減が可能となる
・ 製錬等の受入施設を予め登録制にしておくなどの改善案があると思う。

3.国際循環港構築に向けての現状と課題(九州テクノリサーチ 佐藤会員)

・ 国際循環港とは、国際資源循環(輸出入)の拠点、安全性、利便性、関係者のwin-winを担保するもの。具体的機能は、港湾、前処理、保管・検査、手続、リサイクル機能。単なる物流の通過点ではダメで、街道ではなく宿場にならないと実現は難しい。
・ 北九州市は国際循環拠点のイメージを示した。NTTデータ経営研究所などとの連携でトレーサビリティ実験中。大水深港湾のひびきコンテナターミナルが拠点。
・ 輸出の総量規制(例:7割は輸出して良いが3割は国内処理しなければいけない)のようなことも考えられる
・ 今後は環境負荷低減の徹底、単なる通り道からそこでビジネスが生まれる仕組みの構築、、国内リサイクル産業との連携等が求められる。東アジアに、相互監視がきいて安全なエコタウンのようなものがたくさんできれば、国際資源循環の安全確保の仕組みのひとつの拠点を構築できる。

パネルディスカッション

遠藤
・ 部会での勉強を通じて、資源枯渇性というよりは資源確保面での課題であることが分かった。また技術面でも製錬中心に基盤技術を保有しており、大きな課題がある訳ではないことも分かった。したがって、社会システムとしていかに廃棄物を確保し、循環させるかということが重要と認識している
・ 国内での回収実験や海外からの買い付け実験を実際にやってしまうというのは画期的な取組。考え方そのものは昔からあったかと思うが、実施に移せたきっかけは何か?
中村先生
・ 考えは昔から頭の中にあった。非常に協力してくれた同和エコシステムの存在が大きい。またタイミング的に今やると社会的インパクトがあるということもあった。製錬関係者はずっと同じようなことを考えていたかと思うが、協力しようという企業がこれまではなかった
遠藤
・ タイミングとは具体的にどういうことか?
中村先生
・ 資源確保ということで社会的に受け入れられる状況が非常に重要。これまで軒並み資源価格が安く企業インセンティブが出ず、国も動かなかった
遠藤
・ 人口鉱山鉱床のリサイクルの成立条件は?
中村先生
・ 一般的には経済原則以外にはない。経済原則で回らない部分をストックすれば経済原則が出てくることを皆に周知するためにやっている。幾ら高品位に金が含有しているものがあっても、ひとつしかなければ、それは資源ではなくてサンプルに過ぎない。そこが経済性に最も効く所
・ また収集面も重要。小型電子機器をいちいちマニフェストをつけて回すと手間がかかるので、我々がやっているボランティアを絡めた方式の方が合理的ではないかと考えている
遠藤
・ 廃棄物処理法上の問題は?
中村先生
・ 自治体の許可を有している事業者であることが必要。一般廃棄物は(既存の適正処理の概念以外には)どう扱っていいのか明確でない。また産業廃棄物は90日ルールがあるが、一般廃棄物を貯めておくという概念自体がないところも問題。その状況を逆手にとって大館市のOKをもらって実験している状況。秋田エコタウンに拡大するために各自治体を取りまとめるだけでも非常に大変(計画の整合性をとる等)。最も大変なのは秋田市で、ガス化溶融炉が導入されており、全てこれで対応可能という建前になっており、新たな取組を追加するのが難しい状況
遠藤
・ 保管期間は90日どころでなくもっと長いスパンが考えられていると思うが
中村先生
・ モノ、元素による。かなり長いスパンになるものも想定される
遠藤
・ 海外流出との取り合い懸念は?
中村先生
・ 現状は価格的に取り合いになっている。従来は良い所取り(たぬき掘り)をしてその他はいい加減な扱いになってしまう。現在の金属価格ではかなり経済合理性があるので、有価物で得られる利益の余裕を回してストック分のコストに回すことができると考えている。、それを支えるファンドのあり方についても勉強中である。ただし、収集分はボランティア的な対応を前提にしている。こういうシステムが良いのではというご提案があれば是非お願いしたい
遠藤
・ 技術的にはどういう課題があるか?
中村先生
・ 技術開発も重要なポイントであるが、社会システムの方が問題点が大きい。技術的な課題は小型家電から排出されるプラスチックの扱い。小型家電のプラスチックの処理は家電のプラよりも大変であり、リサイクル部会の研究テーマにされればどうか
・ プロセスと場所が大事。金属リサイクルは処理プロセスを持っている場所なら大丈夫。昔はそういうプロセスを持っている所が多かったが、現在は中国との競争の中でそういう場所が少なくなってきている。日本にはプロセスがないものも現実にある。

遠藤
・ バーゼル法の障害は?
本田氏
・ バーゼル法は先進国から途上国への有害物の輸出規制を前提に考えられているが、我々の取組は途上国から先進国への輸入であり、有価引き取りが大前提であり、有価で買ったものを不法投棄する人はいないのだから、もう少し規制緩和しても良いのではないかと考える。有価であることを試算して輸入する方法もあるが、時間がかかるうちに無価になってしまうおそれもある。経済産業省と環境省の別々の窓口を一本化することもあるのではないか
遠藤
・ 手続の簡素化、電子化の動きは?
本田氏
・ シンガポールはメールだけで、1箇所の手続きで決済が取れる。アジア域内は電子化プロセスで決済が取れるということになると、バーゼル担当者間での行き違いもなくなり、現状のプロセスの位置関係も明確化される
遠藤
・ 先進国への輸入は相当な規制緩和が可能ではないかということか?
本田氏
・ 資源セキュリティの観点からいうと、そういう規制緩和が必要ではないかと考える
遠藤
 ・海外ではどういう状況か?同じようにバーゼル緩和への動きはあるのか?
本田氏
・ アメリカはバーゼル条約を結ばずにどんどん資源を取っていくという戦略である
遠藤
・ 途上国としては日本に廃棄物資源を出すことを、貴金属等の資源の流出と考え抵抗があるのか?それとも、自分たちで処理できない廃棄物を持っていって処理してくれると捉えているのか?
本田氏
・ シンガポール政府で2,3ヶ月協議に時間がかかった。何故日本にレアメタルを出さなければいけないのかという懸念であり、それに対しては高品位レアメタルでなく低品位である旨説明し、許可が下りた経緯がある
遠藤
・ 国際循環を促進するために、バーゼル法緩和以外の観点で何があるか?
本田氏
・ 廃製品を持ってくるのは合わない。現地で手解体して濃縮したものを輸入しないとコストがあわない
遠藤
・ 今後の展開は?
本田氏
・ インドネシアや台湾からの輸入も徐々に進めている

遠藤
 ・国際循環港の構築に関して、現在はどこまで進んでいるのか?
佐藤氏
・ 北九州はトレーサビリティの基盤整備を行っている状況。秋田県は域内に精錬所があるため、現場に付加価値が落ちるという点で秋田の方が先に進む可能性が高い。見えない形でやられている輸出入を顕在化(見える化)させることで、輸出に不安のある企業に安心な道筋を提供し、その道筋を増やしていくというのが国際資源循環港の位置付け。まずは一歩一歩条件を積み上げている状況
遠藤
・ 海外で同じような動きはないのか?
佐藤氏
・ 欧米は中国から輸出する際に、必然的にある程度大きな船でやり取りされている。日中間は小さな運搬船でのやり取りも可能となっており、だから道筋を見えるものにしていきたいということがある。欧州もアフリカに輸出しているし、欧州はバーゼル条約の手続き慣れしており、バーゼル担当者間のネットワークも強いという差がある。
遠藤
・ 資源性と有害性の両立ということは従来から言われている。現在、ICタグはどこまで進んでいるのか?
佐藤氏
・ 情報自体をサーバー側だけでなくICタグ側に持たせておかないといけないという話もあるが、まともにやるとコストも高くなるので、何でもかんでもICタグでできるわけではないと思う。
遠藤
・ 有価物は経済原理で自然に回るので、それよりは劣る部分を資源化できるためにはどうしたらよいか、というのが3者共通のお話と感じた。このためにも社会システムの検討が重要であると思う。
佐藤氏
・ 気をつけないといけないのは、平均値として有価であっても、そのものを分解したときに有価物と有害物が出てくる場合があること。有価だといって油断してはいけない
遠藤
・ 学会への提言などあればお願いしたい
中村先生
・ 製錬分野の人間であるが、フィールドが広がっている。廃棄物学会も新たな名称になった際に、我々のフィールドともより一層連携していかれればと思う
本田氏
・ 政策提言を積極的にしていただければと思う。日本のためにどう資源確保していくのかという点と、東南アジアの廃棄物処理の観点から重要と考える
佐藤氏
・ リサイクルシステム技術研究部会に一人でも多く参加頂ければと思う

会場の質疑など

質問1
・ 実情を考えると、通常は粗大ゴミは行政が破砕して、鉄とアルミを回収しているだけで基板回収している訳ではない。また市中の回収業者に売ると海外に流れてしまう。行政と連携により回収した粗大ゴミから基板を回収する業者に売れるシステムが必要ではないかと感じた
中村先生
・ あるレベルまで手分解を行う実験をしているが、日本で経済合理性を持ってやるのはかなり大変。手分解で粗々でも分解して次に送るという技術を検討している。日本では回収がボランティアでも経済性を出すのはかなり大変
質問2
・ 中村様に対して質問。世界的にみてアメリカでも同じようなこと(アーバンマイン)を考えているのか?砂漠に埋めてしまえばいいとなれば規模で負けてしまうのではないか?
・ 本田様に対して質問。この仕組みが経済性が出て回りはじめると、途上国側も足元を見て高く価格をつけて結局儲からないということにならないか?またバーゼル手続でここは簡素化できるという部分があれば教えて欲しい。
中村先生
・ アメリカは一部やっている。Waste Management(WM)社が実施。アメリカは製錬業が厳しい状況であり、前処理をしてカナダに送るということをやっている。埋め立てて十分であるという話もあり、州でやり方が違う難しさがある。またソニーアメリカは自社製品をWM社通じて回収をはじめ、ある部分動いている状況
本田氏
・ 既に中国、欧米が高値で買う競争状態にある。今回の実証の結論は、コミュニケーションボード等の高付加価値物は高値買いになっておりペイしない。電源基板等の低付加価値物は保管コストをかけてもペイするのではないかということ
・ バーゼルについては、環境省に対して日本の製錬施設のプロセス説明を免除するということは最低限できるのではないか。有価無価についても、途上国から輸入するからには有価であることが前提なので、その辺も簡素化できるのではないか

総括

松藤部会長
・ レアメタルの世界は知らなかったが、量ではなくて質的なものが重要であり、既にあるシステムを使っているということで、従来部会で取り上げてきたプラスチックとは全く逆の体系にあることが分かった。今年レアメタルを取り上げた部会の方針は間違っていないと思った。
・ 資源出身の中村先生が収集実験を行なっておられるということを伺って、廃棄物側の人間としては焦らないといけないと感じた。

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