第17回廃棄物学会研究発表会 リサイクルシステム技術研究部会 小集会 要旨
              
文責:田崎智宏(独立行政法人国立環境研究所)2006.11.20
1,テーマ 「建設リサイクルの現状と課題」−プラスチックを中心に−

 
平成18年度のリサイクルシステム・技術研究部会では、来年度に建設リサイクル法の見直しが予定されていること、ならびに過去2年間の部会活動として容器包装プラスチック、家電プラスチックのリサイクルを検討してきたことをふまえ、「建設リサイクルの現状と課題−プラスチックを中心に−」と題した小集会を11月20日、小倉市西日本総合展示場にて開催した。4名のパネラーによる発表(部会による調査成果の報告含む)の後、パネルディスカッション、フロアとの質疑応答が行われた。
以下のその概要を報告する。

 
2,パネラーによる発表
(ア) 橋本征二「建設系プラと建設リサイクル法
 建設廃棄物中の廃プラスチックの割合は0〜1%程度にしかすぎないが、プラスチックの全体量からみると取り組むべき一定の量(割合)を占めている。建設系プラスチックの物質フローをみてみると、投入は150〜200万トン(建材の容器包装は含まず)、これらの一部が新築系の廃プラになるとともに多くがストックとなり一定期間後に排出され、その量は30〜90万トン(これは30年より以前の投入レベルに相当。ただ、廃棄物にならない残置物もあるので注意)。建廃プラのうち、塩ビの割合が大きいので、建プラを建リ法の対象とするときには、塩ビのみとするかどうかが論点となる。また、今後、解体系・改装系の排出が増大するので、すそきりの見直しなどを含めた検討が重要だろう。  それから、サーマルリサイクルと縮減の扱いをどうするか、再資源化率の分母をどうするかという論点がある。建廃プラを対象品目とするのであれば、そのための分別解体基準が必要になるとともに、廃プラをまとめて小口回収するようなシステムが必要となるだろう。建廃全体に係る論点としては、フローのより正確な把握(解体後の実績の提出とともに統計データとしての収集・整理)と問題設定(3資材以外の建廃の何が問題でどういう方向で対処するのかの明確化)が重要である。

(イ) 堤恵美子「廃プラの回収・分別システム」
 埋め立て一辺倒であった建廃プラの処理に変化が表れている。例えば、セキスイハウスのゼロエミッション分別システムは革新的である。混廃中のプラスチックの割合は20%であるが、木くずの割合などが減少しているので、廃プラの割合が増えてきていると感じる。塩ビの埋め立ては当然という発想が旧来的であったが、塩ビ管はもちろんのこと、タイルカーペットや壁紙系の塩ビもリサイクルがされるようになってきている。現在はプラスチックリサイクルの端境期にあるといえるだろう。
一方、「出口のないリサイクル」と言われていた理念型のリサイクルは挫折してきた。そうならないためには、動脈産業に戻すという前提でシステムの全体像を描く必要がある。がれき類は比重1.8ぐらいであるが、混廃の比重は0.3位であり、プラスチックが多くなると、さらに軽くなる。そうすると、容量で輸送される混廃の輸送量は非常に大きく、コンクリートを超える車両が走る。リサイクルはコストとCO2の面で輸送が問題だと言われていることが、ここにもあてはまる。そのためには、小口回収システム・中継施設の整備といったことが必要となる。

(ウ) 阪内孚史「塩ビ建材の回収とリサイクル」
 塩ビの生産量は日本では減少しているが世界では増加している。LCAに優れた素材である。塩ビはマテリアルリサイクルの優等生だか、燃焼に関して「燃やせない」と思われているというハンデがある。ただし、多くの炉は塩ビがあってもOK。
 廃塩ビのリサイクルについて、最新の事例紹介があり、マテリアルリサイクルの4例、フィードストックリサイクルの3例、またエネルギー回収が可能なことを示す2例が紹介された。
 壁紙、床材、タイルカーペットの3品目をみても、使用される主な建築物が異なるので、分別収集の効率化は難しい。小口巡回回収型と集荷拠点回収型の複合型の検討も行いたい。既存の中間施設を利用するという点でメリットがある。

(エ) 佐藤明史「部会報告」
 WG1の「建設リサイクル法の見直しに向けて」では、焼却による減量化の扱いを確認。13の問題点を提示。品目拡大には、経済性、環境負荷、エネルギー効率の3つの評価軸で総合的に判断する必要がある。また、質の高いリサイクルをどのように確保するかという問題提起。プラの特化する理由の説明。
 WG2の「建廃プラの発生、回収、処理の実態と今後の課題」では、新築工事と解体工事からの廃プラ発生割合を説明。他品種で分別が困難なことに問題の一つがある。設計から考慮すべきこともある。
WG3の「建設リサイクル処理システムの技術検討」では、塩ビ、FRP、ポリウレタンのリサイクル技術の報告があった。

3,パネル討論
 パネル討論では、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル・エネルギー回収のそれぞれの可能性、リサイクルシステムの成立要件などについて議論が交わされた。作業者への分別方法の周知ならびに分別品の品質管理が重要、解体主が解体費用の価値判断ができていない現状を改善すべき、解体工事の完了報告を行政へも行うべき、リサイクルはシステム全体をきちんと考慮すべき、建築物の長期使用も重要であり都市開発のグランドデザインとのセットで考える必要があるといった意見が出された。

以下、主な意見を示す。
全体像が分かる網羅的なデータがないという意味で、データが不足している。将来の予測ということから考えると、建設系の廃プラスチックは今後増えていくだろう。ただし、エネルギー利用が促進されると、木くずのように取りあいになるということも考えられる。
きちんと分別しないと、処分場が受け入れない状況となっている。そのためで、分別が進んでいる。そうすると混廃が減ってくる。ただ、思ったより混廃が集まらないので困っている。
設備はよいが、稼働率を高めていかないといけない。
塩ビ製パイプのリサイクルは当然と思われている節があるが、汚れのあるものは難しかった。現在では、デュアルのシステムになり、汚れのないものだけでなく、汚れのあるものも汚れを落としてリサイクルするようになってきている。それから、塩ビ製クロスについては、接着剤が水を含んでしまっている。こういった状況のままマテリアルリサイクルは難しいが、排出側とリサイクラーとの情報交換を通じた協力の場をつくることが重要。
いろはの「い」のような話ではあるが、最初の一歩は分別ということがしっかり徹底されることが重要である。不慣れな作業者一人が他のものを混ぜてしまうことで、リサイクルが回らなくなる。分かりやすい分別基準が必要となる。
サーマルリサイクルもケミカルリサイクルも進んできている。ただ、ケミカルについては条件がまだ厳しい。
リサイクルでは、取りあいになると困る。やろうというインセンティブをどのように働かせるかがポイント。
技術開発は進んでいるが、コストが高いという意味ではこれから。
容器包装リサイクル法と異なるのは、コストの負担が直接解体主にかかっている点。解体主がきちんとコストの価値判断ができる状況にはない。負担するコストが不適正であれば、廃棄物の不適正処理につながるので、コストや責任に対する認識を普及することが必要。
現在の建設リサイクル法では、事前に届出をすればよいことになっているが、(解体工事などの)完了の実態は分からない。現在は、理解を広げることが重要で、報告をしてもらうということは認識を広めることにもなる。
エネルギー供給からするとプラスチックのリサイクルによるエネルギー供給には限界がある。経済効率の高いところからやるべき。
欧州では、注文住宅を建てるということは認められておらず、リユースがメインで、新築も厳しい制約のなかで行なわれている。また、ストック社会という言葉もあるように、リデュースということも重要であるので、そちらの検討もすべき。
欧州について感じるのは、街並みを守るということが、結果として建築物の使用年数を長くしているということ。そういったセットで考えないといけないだろう。
グランドデザインにそって街並みをつくる、ロングスパンで考えるということをやらないといけないのだろう。
資源エネルギーでバランスがとれているのか。リサイクルのために、必要以上の資源エネルギーを投入しているのではないか。
がれき類は重たいため、LCAにおいては輸送が効いてくる。関東圏のようなところでは、周りに山がなく、採石場からの輸送距離があるため、エネルギー的にもリサイクルは有利である。
LCAは一つの手法である。ただ、重み付けの問題はでてくる。また、コストをかければいくらでもリサイクルできるので、何を問題とするかの優先順位を決めてやり、それに基づいて評価が行われることが重要。