特別講演
1, インジウム資源の有効利用(三井金属 高橋氏)
・ ここ3年でインジウムリサイクルがかなり進展。最近は供給過剰状態
・ 2003年起点に思惑的な要因で100ドル/kgから1,000ドル/kgに急上昇。足元では650ドル/kg
・ 8割はリサイクルインジウム。残りは亜鉛製錬の副産物としてバージン材投入。亜鉛製錬からのインジウムは350ドル/kg以上であると製錬メーカーはペイするため、まだ下落する余地あり
・ ITOターゲットは1,000t/yのインジウム需要があり、テレビ(製品)に行くのは45kgに過ぎずクローズドリサイクルで744kgはまかなえるため162t/yを系外の亜鉛製錬から新規投入すればよい。それに対し、製錬会社は500t/y程度生産しており供給過剰
・ 4年前のインジウムクライシスは、その当時の価格が100ドル/kgだったためにコスト上の問題でリサイクルされていないケースが多く、急激な価格上昇にリサイクルシステム構築が追いつかなかったため
・ 亜鉛は鉄の防錆用途が7割を占め、経済成長率に相関している。このため、亜鉛製錬が急激に低下することはなく、亜鉛鉱石からのインジウム回収は余裕があり、将来的に見てもクライシスは想定できないというのが予想。亜鉛鉱石中のインジウム1200t、うち350ドルでペイするとして600t、実際の生産は500tでまだ余裕有り。

→フロアからの質問 ITOターゲットの大半が返ってくるフローになっているのがよくわからない
・ ITOのセラミックス板を銅板に貼り付けた状態で納品する。利用企業はスパッタという方式でITOを飛ばしてガラスに蒸着させて利用するが、30%くらいを使った状態で使えなくなり、残り70%を使用済み品としてターゲットメーカーに返す(=リサイクル)というフローである

2, インジウムの回収技術(シャープ 辻口氏)
・ 05年に液晶テレビがブラウン管テレビの出荷量を抜いている。世界全体で見ても2011年まで液晶テレビは年率30%で上昇する想定
・ 透明電球材料の性能比較をするとITO、ZnO、SnO2とある中でITOが最も優れており、現在はITOのみが使用されている
・ 液晶テレビからの廃ガラス排出量は2015年に970t、インジウム含有量0.2−0.7t。それが2020年には液晶ガラス4130t、インジウム含有量0.8−3.1tと予測
・ インジウム資源が枯渇する中で、対策としてはインジウム資源確保・増産、インジウム使用量低減が考えられる。また当面はインジウムリサイクルが求められている
・ 使用する全体の3−4割が今後のリサイクル対象となる。既にターゲット未使用分は納品メーカーに返却している。また装置壁付着分は2005年4月より回収を開始。現状ではエッチング廃液分と液晶パネル搭載分が未回収のままとなっている
・ イオン交換樹脂を用いた液晶パネルからのインジウム回収技術を開発。回収率は90.1%で、回収インジウムスラッジの純度は94%
・ 家電リサイクルプラントでのリサイクルを見据えて、大気圧プラズマ照射によるインジウム回収技術を開発。湿式プロセスはプロセスの多段化と廃液の発生があるため、よりシンプルなプロセスを検討。30秒のプラズマ照射で79%の回収率
・ パネル中のインジウムは含有量が非常に希薄であり、技術的に可能だが経済性に問題。廃棄パネルのリサイクルを考慮した場合、パネルガラスを付加価値の高い用途に転用できることが重要となる