パネルディスカッション


遠藤
・ 部会での勉強を通じて、資源枯渇性というよりは資源確保面での課題であることが分かった。また技術面でも製錬中心に基盤技術を保有しており、大きな課題がある訳ではないことも分かった。したがって、社会システムとしていかに廃棄物を確保し、循環させるかということが重要と認識している
・ 国内での回収実験や海外からの買い付け実験を実際にやってしまうというのは画期的な取組。考え方そのものは昔からあったかと思うが、実施に移せたきっかけは何か?
中村先生
・ 考えは昔から頭の中にあった。非常に協力してくれた同和エコシステムの存在が大きい。またタイミング的に今やると社会的インパクトがあるということもあった。製錬関係者はずっと同じようなことを考えていたかと思うが、協力しようという企業がこれまではなかった
遠藤
・ タイミングとは具体的にどういうことか?
中村先生
・ 資源確保ということで社会的に受け入れられる状況が非常に重要。これまで軒並み資源価格が安く企業インセンティブが出ず、国も動かなかった
遠藤
・ 人口鉱山鉱床のリサイクルの成立条件は?
中村先生
・ 一般的には経済原則以外にはない。経済原則で回らない部分をストックすれば経済原則が出てくることを皆に周知するためにやっている。幾ら高品位に金が含有しているものがあっても、ひとつしかなければ、それは資源ではなくてサンプルに過ぎない。そこが経済性に最も効く所
・ また収集面も重要。小型電子機器をいちいちマニフェストをつけて回すと手間がかかるので、我々がやっているボランティアを絡めた方式の方が合理的ではないかと考えている
遠藤
・ 廃棄物処理法上の問題は?
中村先生
・ 自治体の許可を有している事業者であることが必要。一般廃棄物は(既存の適正処理の概念以外には)どう扱っていいのか明確でない。また産業廃棄物は90日ルールがあるが、一般廃棄物を貯めておくという概念自体がないところも問題。その状況を逆手にとって大館市のOKをもらって実験している状況。秋田エコタウンに拡大するために各自治体を取りまとめるだけでも非常に大変(計画の整合性をとる等)。最も大変なのは秋田市で、ガス化溶融炉が導入されており、全てこれで対応可能という建前になっており、新たな取組を追加するのが難しい状況
遠藤
・ 保管期間は90日どころでなくもっと長いスパンが考えられていると思うが
中村先生
・ モノ、元素による。かなり長いスパンになるものも想定される
遠藤
・ 海外流出との取り合い懸念は?
中村先生
・ 現状は価格的に取り合いになっている。従来は良い所取り(たぬき掘り)をしてその他はいい加減な扱いになってしまう。現在の金属価格ではかなり経済合理性があるので、有価物で得られる利益の余裕を回してストック分のコストに回すことができると考えている。、それを支えるファンドのあり方についても勉強中である。ただし、収集分はボランティア的な対応を前提にしている。こういうシステムが良いのではというご提案があれば是非お願いしたい
遠藤
・ 技術的にはどういう課題があるか?
中村先生
・ 技術開発も重要なポイントであるが、社会システムの方が問題点が大きい。技術的な課題は小型家電から排出されるプラスチックの扱い。小型家電のプラスチックの処理は家電のプラよりも大変であり、リサイクル部会の研究テーマにされればどうか
・ プロセスと場所が大事。金属リサイクルは処理プロセスを持っている場所なら大丈夫。昔はそういうプロセスを持っている所が多かったが、現在は中国との競争の中でそういう場所が少なくなってきている。日本にはプロセスがないものも現実にある。

遠藤
・ バーゼル法の障害は?
本田氏
・ バーゼル法は先進国から途上国への有害物の輸出規制を前提に考えられているが、我々の取組は途上国から先進国への輸入であり、有価引き取りが大前提であり、有価で買ったものを不法投棄する人はいないのだから、もう少し規制緩和しても良いのではないかと考える。有価であることを試算して輸入する方法もあるが、時間がかかるうちに無価になってしまうおそれもある。経済産業省と環境省の別々の窓口を一本化することもあるのではないか
遠藤
・ 手続の簡素化、電子化の動きは?
本田氏
・ シンガポールはメールだけで、1箇所の手続きで決済が取れる。アジア域内は電子化プロセスで決済が取れるということになると、バーゼル担当者間での行き違いもなくなり、現状のプロセスの位置関係も明確化される
遠藤
・ 先進国への輸入は相当な規制緩和が可能ではないかということか?
本田氏
・ 資源セキュリティの観点からいうと、そういう規制緩和が必要ではないかと考える
遠藤
 ・海外ではどういう状況か?同じようにバーゼル緩和への動きはあるのか?
本田氏
・ アメリカはバーゼル条約を結ばずにどんどん資源を取っていくという戦略である
遠藤
・ 途上国としては日本に廃棄物資源を出すことを、貴金属等の資源の流出と考え抵抗があるのか?それとも、自分たちで処理できない廃棄物を持っていって処理してくれると捉えているのか?
本田氏
・ シンガポール政府で2,3ヶ月協議に時間がかかった。何故日本にレアメタルを出さなければいけないのかという懸念であり、それに対しては高品位レアメタルでなく低品位である旨説明し、許可が下りた経緯がある
遠藤
・ 国際循環を促進するために、バーゼル法緩和以外の観点で何があるか?
本田氏
・ 廃製品を持ってくるのは合わない。現地で手解体して濃縮したものを輸入しないとコストがあわない
遠藤
・ 今後の展開は?
本田氏
・ インドネシアや台湾からの輸入も徐々に進めている

遠藤
 ・国際循環港の構築に関して、現在はどこまで進んでいるのか?
佐藤氏
・ 北九州はトレーサビリティの基盤整備を行っている状況。秋田県は域内に精錬所があるため、現場に付加価値が落ちるという点で秋田の方が先に進む可能性が高い。見えない形でやられている輸出入を顕在化(見える化)させることで、輸出に不安のある企業に安心な道筋を提供し、その道筋を増やしていくというのが国際資源循環港の位置付け。まずは一歩一歩条件を積み上げている状況
遠藤
・ 海外で同じような動きはないのか?
佐藤氏
・ 欧米は中国から輸出する際に、必然的にある程度大きな船でやり取りされている。日中間は小さな運搬船でのやり取りも可能となっており、だから道筋を見えるものにしていきたいということがある。欧州もアフリカに輸出しているし、欧州はバーゼル条約の手続き慣れしており、バーゼル担当者間のネットワークも強いという差がある。
遠藤
・ 資源性と有害性の両立ということは従来から言われている。現在、ICタグはどこまで進んでいるのか?
佐藤氏
・ 情報自体をサーバー側だけでなくICタグ側に持たせておかないといけないという話もあるが、まともにやるとコストも高くなるので、何でもかんでもICタグでできるわけではないと思う。
遠藤
・ 有価物は経済原理で自然に回るので、それよりは劣る部分を資源化できるためにはどうしたらよいか、というのが3者共通のお話と感じた。このためにも社会システムの検討が重要であると思う。
佐藤氏
・ 気をつけないといけないのは、平均値として有価であっても、そのものを分解したときに有価物と有害物が出てくる場合があること。有価だといって油断してはいけない
遠藤
・ 学会への提言などあればお願いしたい
中村先生
・ 製錬分野の人間であるが、フィールドが広がっている。廃棄物学会も新たな名称になった際に、我々のフィールドともより一層連携していかれればと思う
本田氏
・ 政策提言を積極的にしていただければと思う。日本のためにどう資源確保していくのかという点と、東南アジアの廃棄物処理の観点から重要と考える
佐藤氏
・ リサイクルシステム技術研究部会に一人でも多く参加頂ければと思う