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宿泊ゼミ

宿泊ゼミ

 


1.開催当日

2006年10月6日夕刻,東京上野駅近郊の旅館で若手の会宿泊ゼミが開催された。この宿泊ゼミは,H17若手の会総会で承認された新しい活動であり,「若手の声」の分担執筆を除くと,唯一の実地活動である。毎年,廃棄物学会予算に組み込まれている若手の会活動費用年10万円の予算は,若手の会から毎回支給申請してこなかったこともあり,十分に活用されてこなかった。そこで,H17年度に申請して支給を受け,今回の宿泊ゼミの参加者の旅費の一部に充当することが予定されていた。

当日は,猛烈に発達した低気圧と熱帯低気圧が太平洋上にあり,日本各地で交通の乱れ,転覆事故などが相次いだ。若手の会宿泊ゼミ参加者も電車が止まる影響を受け,すべての参加者がそろったのは,午後8時過ぎとなった。

今回は参加者が4名と少ないこともあり,会議室ではなく,宿泊する旅館の和室内で議論を行った。写真からは大変リラックスした雰囲気を感じるが,4人の議論が夜9時から深夜2時半まで及んだこと,および飲食はポケットマネーであることを強調したい。

 

2.議題

「若手の会の機能」と「活動方針」に関して,全般的な方向性について議論するとともに,今後主要な活動内容となる「若手の会会員による共同研究」の可能性と具体的な研究内容キーワードなどを取り上げた。

3.ショートプレゼンと議論の様子

参加者4名によって以下の内容についてまとめられ,発表された。

(1)   若手の会の自治体新規職員・学生への役割,地域支部連絡役の役割と意義・提案

 (事務局:朝倉,国立環境研究所)

 朝倉からは,「若手の会の全体像」,「学生会員の学会への取り込み・研究部会への橋渡し的役割」,「自治体の方からの要望をまとめる問題点の吸い上げ・問題提起の役割」,「学生の相談窓口」,「地域支部連絡役の役割」,についての発表があった。特に自治体職員については,廃棄物の処理処分管理に実際に携わる人達であり現場で発生する具体的な問題を持っていること,また,廃棄物担当となる際にはほとんど経験がないことから学会・業界に対する要望を持っていると考えられることが指摘された。そこで,若手の会がその要望を吸い上げ,廃棄物学会に現場の問題点を提示し,研究シーズを発信する機能を持つことについての提案があった。

その後の議論では,自治体職員からは,現在の問題点は守秘義務などからヒアリングできなくても,過去の事例や経験については話してもらえる可能性について指摘があった。また,廃棄物学会の会員にはどういう技術経験を持った人たちがいるか?についてのデータベースがあると,自治体職員が相談しやすいのではないかと提案があった。また,自治体の人が知りたいことは研究シーズというよりも現在発生している問題について(ニーズ)であるので,こちらを優先して解決すべき,という指摘があった。また,地域支部連絡役の業務である「学会誌上における活動内容の報告」について,研究部会が今後行う研究内容の総説記事についての提案があった。

(2)   他学会の若手の会の活動の紹介と廃棄物学会若手の会の活動提案

 (関東地区連絡役:坂内,国立環境研究所)(社会人会員:高橋,国立環境研究所)

 次に,高橋と坂内から,「他学会の若手の会の活動内容の紹介」と,「本学会の特徴」,「若手の会の活動内容について」の提案があった(写真2)。他学会での夏のセミナーの講演題目は多岐に渡る例が多く他分野の研究を知る良い機会となるが学生会員が身銭を使ってまで参加する意義があるか疑問であることの指摘,研究費獲得は若手の会としては廃棄物学会若手の会のみであることの報告,他の若手の会に見られる博士課程の学生向けのアドバイス(北海道大学石井先生提案)の紹介,夏のセミナーについては廃棄物六法や環境計量士などの資格についての勉強会の提案,共同研究についてはテーマを一つに絞っては研究者が集まらないことの指摘,取り組みやすい内容としては会員対象の廃棄物排出実態調査・廃棄物処理サービス要望調査についての提案,役職数人(助手、ポスドク)+メンバー数人(博士学生)でステップアップする形態の提案があった。

その後の議論では,夏のセミナーの開催方法として,アミューズメント的な要素も取り入れる(ゲーム形式とか)ことの提案,専門的なトピックで共同研究のメンバーを集めるのはむずかしいので社会科学的な内容で多人数参加型でやるべきとの提案があった。廃棄物の知識がある会員に対するアンケート調査の調書として,「こうしたほうが改善するのでは?」という意見を持っていること,アンケートの内容を理解してくれること,モチベーションが高いことが指摘された。アンケートのセッティング方法として,夏のセミナーでアンケート調査の質問項目,とりまとめ方針について集中議論し,翌日,アンケート実施内容をセミナー参加者全員に伝えることが提案された。また,知識のある人のほうが,たとえば分別排出についてきちんとしてないかもしれないことが指摘された。

(3)   若手の会会員が取り組んでいる&申請中研究課題マッピング

(世話人:石垣,龍谷大学)

 最後に,石垣から若手の会会員が取り組んでいる,もしくは申請中である研究課題をメールで回答してもらい,これをさまざまな評価軸でマッピングした成果について説明があった。例えば,「応用的・現実・実用的~基礎研究・学問的」に対する「重要度・緊急性・社会要請」の評価軸の中で,得られた研究課題から抽出したキーワードを分布させた。近い属性同士のキーワードで共同研究を組むと,研究者が限られるので,広い分布で組み合わせることが提案された。

その後の議論では,キーワードは並べておいてある程度の研究筋道は立てておくこと,たとえば総会で「あなたはどこで参加できるのか」を問うて共同研究内者として入ってもらう方法が提案された。

 

4.今後の予定

深夜,日をまたぎ,高橋が当日の議論と今後の予定を取りまとめた。以下,若手の会会員に送付するメールの内容であり,総会までの活動の原案である。

 

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若手の会の皆様

先日,コアメンバーで今後の若手の会の活動方向,活動の活性化に向けて議論を進めました。

今回はこのメールで活動方向とその具体案に関して提案致します。忌憚ないご意見を賜れますようお願い申し上げます。

 

<活動の方向性>

学会内で「若手の会」のプレゼンスをより示す方向を目指したいと考えます。ではどのようにプレゼンスを示すか?以下の二つの方法を提案致します。

・     学会誌,論文誌等への研究成果の提示,掲載

・     競争的資金の獲得(それに向けたマネージメント)

・     若手の会の活動について

それぞれに関しては,次の手順を考えました。

(1)   学会誌,論文誌等への研究成果の提示,掲載

若手の会でのマンパワーを利用することを考え,調査,アンケートを通じた研究を狙います。具体例では

・廃棄物学会年会での廃棄物の排出特性(種類と量)

⇒どこまで分別に協力してもらえるか? 誤混入率は?

・雑誌類のリサイクル率

⇒年代,一人暮らし,回収日認知率との関係は?

・どの曜日にごみを出したいか?

⇒年代,世帯,他の要因の影響と原因は?

一人三名(自分,家族,友人)のアンケートノルマであれば,アンケートへの負担は少ないと考えます。調査結果を有志のメンバーがまとめ,論文化を目指します。

(2)   競争的資金の獲得(それに向けたマネージメント)

若手の会が競争的資金の獲得に向けたマネージメントを行います。具体的には,

・     若手の会のメンバーの研究キーワードのデータベース化

・     キーワードの属性化

・     同一属性の中でキーワードを組み合わせ,それに見合う新たな研究シーズを検索

困難な作業ではありますが,現状では予想できなかった独創的な研究コラボレーションが発見できます。これをもとに廃棄物科研費,文科省科研費等の獲得を目指します。従来はベテラン研究者の人的コネクションに依存していた研究コラボレーションを若手の会で支援し,若手研究者の研究資金獲得をサポートしていきます。

(3)   若手の会の活動について

他学会では若手の会がサマースクール等を主催し,講師を呼んで講演会,勉強会を催しています。しかし同様の活動を廃棄物学会若手の会で行うこと,継続していくことは困難であると考えます。

講演会は分野の違う研究を知る良い機会ではありますが,学生に対して身銭を切ってまで参加させるモチベーションを与え得るものであるとは考えづらいところがあります。

そこで将来的な目標として,次の二点をサマースクールの活動内容として提案致します。

・     学生への動機付け

環境計量士等の資格を取るメリット,取得の仕方,勉強の方法などを有資格者の方に講演して頂きます。

・     廃棄物学(行政)へのセミナー

廃棄物学が他の学問と異なる点の一つに,実際的であり,行政(法制度)と密接に関連していることが挙げられます。しかし学生,若手の研究者で例えば廃棄物六法に関して熟知している者はどの程度いるでしょうか?廃棄物に関わる研究者,また関わる学生として知っておくべき廃棄物行政に関する基礎知識の習得をセミナーで狙います。

これは就職していく学生に対して若手の会で廃棄物行政への知識・理解を教授し,社会に対して廃棄物分野に強い人材を供給していく側面も視野に入れております。なお,若手の会,特に主となって動くメンバーや研究者を対象とし,若手の会独自の研究会を開催する方向も意味があるものと考えます。

皆様の率直なご意見等をお聞かせ頂けますようお願い致します。年会までに若手の会での研究に関しては具体的なアクションを起こして行きたいと考えております。

例えば年会でのごみ調査では調査項目,人の選定など,アンケート調査では調査内容の具体化,論文化への方向性とそれに応じたアンケート項目の決定を年会前に行い,年会での若手の会にて実施していくことを狙っております。

また,競争的資金獲得に向けては,年会までに組み合わせと研究シーズの探索の具体化を終え,年会にて具体案の提示,修正,採択を行い,実際に来春での応募に進めたいと考えております。

これをたたき台として皆様のご提案,ご協力頂けますようお願い致します。

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