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第9回企画セッション報告

第9回企画セッション報告

企画セッション「ローカルエネルギーとしてのバイオ燃料」報告

日時:2011年11月3日

場所:東洋大学白山第2キャンパス(第22回廃棄物資源循環学会研究発表会)

報告者:末原憲一郎(三重大学)

 

バイオマス系廃棄物研究部会では,要素技術とそのシステム化を中心に,現状把握,利用構想,推進体制や政策面なども踏まえた議論を行い,バイオマス系廃棄物を有効に利活用する視点からの取り組みを進めてきた。昨年度の第8回企画セッションでは,利活用が進展しない現状に対して,①地域性を重視したシステム作りが必要,②ローカルテクノロジーと地産地消が重要,③新技術の開発と並行して既存技術をうまくまとめあげることに力を入れるべき,との結論を得た。一方で,東日本大震災やそれに伴う原発事故をきっかけに,従来の大規模・集中型のエネルギー供給システムから小規模・分散型の再生可能エネルギーの重要性が議論されるようになってきた。そこで,本企画セッションでは,①生産活動で必ず排出されるバイオマスなどの燃料化を震災復興と農村・都市計画の基盤的な技術やシステムにできないのか,②地域のバイオマス系廃棄物の効率的な活用によりどの程度のエネルギー供給が可能であるか,また,③どのような新たな取り組みにより供給量を促進させることができるのか,更に,④バイオ燃料の円滑な利活用に向けて技術的・制度的にどのような視点が必要であるかなどを議論したいと考え,それぞれの方面でご活躍しておられる5名の方にご講演いただいた。

講演の部では,まず中崎清彦部会長(東京工業大学)が,これまでの部会活動の経緯を説明した。続いて,本企画セッションのコーディネーターでもある(財)京都高度技術研究所の中村一夫氏から企画セッションの趣旨説明と事例紹介を,(株)タクマの鮫島良二氏より利活用新技術とエネルギー供給モデルについて,岐阜大学の佐藤健氏より植物を用いた被災地の表土修復とそのバイオマス利活用・ローカルエネルギー供給に伴う雇用創出について,環境省地球温暖化対策課の室石泰弘氏より低炭素社会に向けた国内外の現状と政策面について,最後にNPO法人バイオマス産業社会ネットワークの泊みゆき氏より,市民の立場から見た利用促進に向けた課題と方向性についてご講演いただいた。

総合討論の部では,利用促進に向けた課題と方向性を考える上での3つのポイント(原料拡大,変換技術,法・支援制度)について議論され,それぞれの立場の方が協力して回収から変換・利用が一体となったシステムを提案する必要があるとの意見が出された。また,エネルギーの地産地消,地域の社会形成,環境への配慮,現実的なコスト・経済性の問題などが取り上げられた。先進的な取り組みを行ってきた京都市をモデルに考えた場合,直面した多くの課題や失敗を克服してきた過程を含めた情報を公開し,後に続く方々や団体が円滑にバイオマス利活用へ入っていけるような体制が理想であるとのパネラーの発言は,バイオマス利活用の推進を模索する当部会にとって非常にありがたいことだと感じた。また,フロアからも,今回のエネルギー危機はこれまでとは違った視点(地球温暖化とLCA)が加わったこともあり,基本的な法制度の枠組みが必要であるとの意見が挙がった。それぞれのバイオマスの種類に即した利活用に向けた問題をひとつひとつ解決してゆくことが重要であること,その中には,法制度の枠組み整備の問題のみでなく,市民全員(企業の場合はすべての企業)がバイオマスを利活用してゆくことを意識する社会認識の形成も必要であるとの意見が出された。廃棄物資源循環学会に属する当部会としては,バイオエネルギーという大枠の中でバイオ燃料の利活用を考えるべきだとの意見も聞かれた。

1980年にエイモリー・ロビンスが示したソフト・エネルギー・パスの考え方は,近年ローカルエネルギーと呼び方を変え,実現可能な方策の模索とともに再び議論されるようになってきた。約140名の方々にご参加いただいた本企画セッションを,ローカルエネルギーとしてのバイオ燃料の利活用促進策の具体的な提言への第一歩とするとともに,当部会としても引き続きこの問題を取り上げていくことを約束して企画セッションを終了した。

 

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