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第12回企画セッション「バイオマス産業都市構想に向けた行政の取り組み」報告

第12回企画セッション「バイオマス産業都市構想に向けた行政の取り組み」報告

企画セッション「バイオマス産業都市構想に向けた行政の取り組み」報告

日時:平成26年9月15日(月)

場所:広島工業大学第3会場

報告者:金子栄廣(山梨大学)

原油価格の高騰ならびに2011年の東日本大震災とこれに起因する原発事故の経験を経て,バイオマスへの関心が高まっている。2012年に「バイオマス事業化戦略検討チーム」が策定したバイオマス事業化戦略を踏まえ,翌年には「バイオマス産業都市構想」がスタートした。バイオマス産業都市とは「経済性が確保された一貫システムを構築し,地域の特色を活かしたバイオマス産業を軸とした環境にやさしく災害に強いまち・むらづくりを目指す地域」をいう。平成30年までに約100地区のバイオマス産業都市構築を目指して関係7府省が共同で地域を選定し支援する計画で,これまでに16地域が選定されている。このことを踏まえ,本企画セッションでは昨年度に続きバイオマス産業都市構想を題材に取り上げた。すでに選定地域に選定されている3地域をお招きし,事例紹介とパネルディスカッションを通して,バイオマス産業都市の魅力や普及拡大を進める上で参考にすべき点や課題について議論した。

前半の講演の部では,行政としての取り組みについて3地域の事例をご紹介いただいた。まず岡山県真庭市市長の太田昇氏より「地域資源を活用した地域戦略 ~ バイオマスを中心にして~」という題目で真庭市の地域戦略とバイオマスの利活用についてお話しいただいた。自然,連携,交流,循環,協働の5つのキーワードを掲げ,バイオマス発電,木質バイオマスリファイナリー,有機性廃棄物資源化および産業観光拡大の4事業を重点的に推進することでバイオマス産業都市の実現を目指すということであった。また,バイオマス利活用によって,林業・木材産業の振興,エネルギー自給率の向上,雇用の拡大,二酸化炭素排出の抑制,新たなバイオマス産業の創出および森林機能の回復といった直接的効果が期待できるとのお話であった。続いて,愛知県大府市市民協働部環境課環境衛生係係長の太田雅之氏より「大府市のバイオマス産業都市構想に向けた取り組み」という題目で事例紹介をいただいた。生ごみバイオガス発電を中心に,民間と協働で知多地区(5市5町)におけるバイオマス・新エネルギー利活用ネットワークを構築することを目指すというのがこの構想である。波及効果としては,再生可能エネルギー生産,温室効果ガス削減,農業の付加価値創出等,廃棄物の資源利用ならびに食品廃棄物焼却量の削減を掲げている。講演の部の最後に,岡山県西粟倉村役場産業観光課課長の上山隆浩氏から「バイオマス産業都市西粟倉村の概要」と題して事例を紹介していただいた。森林資源に恵まれた地域であることから,森林整備(川上)と流通管理(川下)の一元管理による森林バイオマス活用を軸とした中山間地モデル地域コミュニティーの形成を目指していることが紹介された。そのために,林業/木材流通システムの革新,小規模分散型再生可能エネルギー供給システムの整備ならびに都市圏との交流人口拡大に向けた体験観光など地域振興策の展開を三本柱としているということであった。

後半では,3地域の代表者をパネラーとしてパネルディスカッションを行った。まず構想が選定されることのメリットについてお話を伺った。いずれの地域とも,国から様々な形で支援が得られることはもちろん,選定地域として地域名とその構想概要が公表されることによって数多くの企業,団体,研究機関などから問い合わせや協力の申し出を受けることになり,構想の具体化に弾みがつくということであった。また,構想を策定する上で採算性をきちんと検討することが重要とのお話もいただいた。続くフロアを交えたフリーディスカッションでは,構想を推進するに当たっての自治体の本気度,各構想の事例紹介に含まれなかったバイオマス(枝・葉など)の利活用など多岐にわたって活発な議論が展開された。

本企画セッションには昨年度並みの90名ほどの参加をいただき,盛会のうちに有意義な時間を過ごすことができた。休日にも関わらずご講演に駆けつけて下さった3地域の方々,セッションにご参加いただき議論に加わっていただいた方々,そして本企画の実施に多方面からご協力いただいた方々に心よりお礼申し上げる。

session12th

総合討論の様子

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